ボクの修行時代 その5
青春ドラマは数多くあり、その主題歌はやたら力強く夕日に向かって駆け出したり、飛び跳ねたりしていたのだが、この頃ブレイクした小椋佳さんの歌はどれも穏やかで、しかも歌詞は難解だった。今聴き直しても意味がわからない。ボクの仲間は皆最後まで歌えたが、その意味となるとわかるやつなど誰もいなくて、 「男の旅に意味なんかあるか!!」 というところに落ち着いてしまう。それなのに、「俺たちの旅」といえば、小椋佳さん抜きでは考えられないし、この頃を思うと小椋さんの歌がすぐ浮かぶ。
朝からキヌカツギと温泉卵を仕込む。袋に詰め、バイクに載せて走る。吉祥寺南口の丸井裏から井の頭公園へおりる坂道は、まさしくこの 「木の葉模様の石畳、まばゆく白い長い壁」 だった。社長の喜ぶ顔を思い、全部売りきって店に戻る覚悟でバイクを押すのだが、この坂道を歩くとめげる。若いカップルに出くわすと目を背けてしまう。なるべくひと目につかない場所にバイクを止め、少し離れた場所で軽く身体を動かし、いかにも朝の体操しているフリをする。
頃合を見てパチンコにでも行くかと思っていたところ、「北村~~!!」 という、社長の声。振りかえるとなんとこのM社長、高架線の脇に隠れてずっとボクの行動を監視してたのだ。真っ赤な顔してこちらにむかってきてる。捕まったら相手は柔道6段軍隊上がりの猛者、とてもではないがちぎり飛ばされてしまう。あわてて大声を出し、社長から逃げながら 「イモがありますよ~、おいしいよ~、あったかいよ~!!」
