しばらく前に、このブログを読んでいただいている在米ポスドクのYさんから、アメリカのバイオテックに興味があるが、実際に就職できたとして、その後の人生はどういった可能性があるのでしょうか、というメールをいただきました。

それがわかれば私も苦労しませんが(笑)、むしろ何が起こるかわからないからおもしろいともいえると思います。ヒジョーに楽観的な見方かも知れませんが、子供と同じで無限の可能性があるということで、様々なリスクがあるとしてもそれを含めてその過程を楽しむことができれば、あまり悩む必要はなくなります。わずか40数年ではありますが、今までの自分の人生を振り返ると、人生先のことなんて本当にわからない、ということがよくわかったので。

学生時代も、日本で会社に入って何年もの間も、自分が将来海外で仕事をする可能性なんて本当にまったく考えもしませんでした。そんなことができるなんてまったく思えなかったし、したいとも思わなかった。それが10年余りの間に気がついてみたら(ひいひい言いながら)英語で論文を書いていたり、想像もしなかった博士号を取っていたり、もっと想像しなかった海外赴任していたり、もっともっと想像しなかった海外への転職をしていたり、というわけで定年まで同じ会社で働くと思って入社した私にとって(本当です)、社会に出てからの人生は予想外のことだらけなわけです。もちろんこれらがよかったのかどうかは人生の最後までわかりません。でも、可能性がこれしかないと決めつけてしまわないことで、その時々に目の前におりて来たチャンスをつかむことができたのかなあと、今までのところは思います。

私がここまで楽観的でいられるようになったのは、ひとつには自分の夢ができたからかも知れません。*今どき夢なんて口にするのもこそばゆいですが(^^;)、要するに将来やりたいことがあるということです。これはアメリカに移住してからできました。というかそれがアメリカに移住するひとつの決め手となったといえるかも知れません。それまでは何がしたいのか自分でもわかりませんでしたが、恥ずかしながら30代後半にしてようやく自分のやりたいことが見つかったというわけです(笑)。

それは以前も書きましたが、シリコンバレーにもっと日本人を増やすことと、世界に通用する日本人のサイエンティストをたくさんたくさん育成するということです。

そのためにはどうすればいいか。まず自分がファイナンシャリーフリーになることだと思いました。これにはいくつもの方法と意味があると思っています。そうなるためには自分が社会から認められ、ある意味で成功する必要があります。つまり自分がまず世界で通用する人材になること。その過程で上記のためのヒントや人脈や情報を得ること。そうした上で、上記にじっくり取り組む環境を作るという戦略なわけです。

自分のことをさんざん書いてしまいましたが、周囲を見ていると、一般論として次のようなキャリアの可能性はあるということはいえます。

ひとつはいわゆる職人のような感じで、ベンチワークを極める。日本でも10年ほど前からフェロー制度とかが導入され始めましたが、アメリカではそんなにあらたまるでもなく、そういったシステムが機能しています。コンピュータのエンジニアほどではないかも知れませんが、Principal Scientistみたいなタイトルはよくあって、いわゆる管理職系ではなく、ひたすらベンチワークでありながら、他の人たちとは一線を画し、常に一目置かれるような仕事をするという道です。管理職ではなくても、給与等の待遇面も決して悪くはありません。

次は日本にいるのと同様、出世してVPとかCEOとかになる可能性ですが、はっきりいってアメリカの会社に入って、社内で出世してCEOになるというのは、まずあり得ないでしょう。実力と英語力次第でVPまでなら十分可能性はあると思います。

もうひとつはある程度まで出世した上で会社を離れ、独立したコンサルタントになったり、自分がスタートアップを起業したりするという道です。自分でベンチャーを起こせばCEOにもなれますし、実際にアメリカで起業してCEOになっている日本人は、それぞれユニークな経緯を経ていますが、それなりにたくさん(何人ならたくさんなのかわかりませんが、私が知っているバイオ系ベンチャーだけでも10名弱)います。この場合、やはり「ある程度まで出世」というのが結構重要と考えています。組織での肩書きよりも大事なのは「個人力」なのは間違いありませんが、現実には「個人力」があれば企業内でもある程度は出世できるはずでもあるからです。そしてそれはやはりその人の「信用」にもつながります。

上記以外に、日本に戻って何かのお役に立つという選択肢が増えればいいなと思っていますが、そういう例がどれだけあるのかはわかりません。

とりとめがなくなってきましたが、私はそんなことを考えています。

*今こちらのテレビジャパンで「フルスイング」という、実在のプロ野球コーチをモデルにしたドラマをやっていて、その人が「夢は大事だ!」と熱く語るので、影響されている。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2008年2月3日(日) 00:17