うちの会社のChemistry Departmentはこれまでのところ大変質素なグループで、今どきどこの製薬会社の合成化学のラボでも持っているような機器がありません。LCMSもないし、それどころかたった1台の普通のHPLCさえ我々のコントロール下にないし、反応は昔ながらのTLCでチェックし、精製は自分でシリカゲルを詰めるガラスのフラッシュカラムが主体だし、まあその理由のひとつは最初からグラム単位でモノを作るという80年代のメディシナルケミストリーのようなことをやっているからでもあるのですが、大変conventionalというかprimitiveなラボです。(追記: 全体として徹底的にけちけちしたのが、最初の数年間を生き延びるのに大変重要だったのですが)それでもこの2,3年の間に、臨床開発化合物を3つ出しましたし、そのうち1つは大手に導出、もうひとつは昨日のエントリーで報告したようにいい感じで進んでいます。お金にもちょっとだけ余裕が・・・そういった成果を踏まえて最近ようやく、せめて今どき普通の設備を導入してもいいのではないかという機運が高まり(笑)、そのひとつとして先々週からmicrowave reactorのデモをしています。原理は家庭用の電子レンジと同じなのですが、化学反応用にデザインされた電子レンジというものが今では広く普及していて、ある種の化学反応が大変効率的に行えるものです。もう何年も使っている他社の知人などからは、一度使うとそれなしでは生きられないといったことを聞いていたのですが、私の印象では、正直なところ別になくてもやっていけるかな・・・という感じでちょっと期待はずれ。ひとつの理由は上記のようにスケールの問題があります。現在のところ、microwave reactorでできる反応のスケールには限りがあり、まだ大量のものを作るのには適していないことがあります。でもあって困るものでは決してないですし、いわゆる製薬会社の予算から見れば大した金額のものではないので(約2万ドル)、予算があるならぜひ買っておきたいとは思います。自分でも何がいいたいのかよくわかりませんが、自分の買い物なら2万ドルは一大事なのに対し、会社の買い物だと大したことないじゃんなんて思ってしまう不思議な感覚がありますね~。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2007年6月9日(土) 01:05