久々にサンフランシスコ交響楽団の演奏会へと足を運ぶ。メインの曲目はベルリオーズの幻想交響曲。幻想交響曲は、学生時代に演奏したことがある懐かしく思い入れのある曲で、聴いていても楽しい作品。
今回の座席は前から3列目というステージに物凄く近い席。席に座って正面がコンサートマスターの席。だから、指揮者の表情も非常に良く見える。
今回の演奏会は2曲プロ。1曲目は同じくベルリオーズの作品で「レリオ、または生への回帰」というもの。はじめて聴いたけど、ベルリオーズらしく大編成の曲でフルオーケストラに、フルコーラス。そして、バス・テナーのソリストが4名もいました。ソリストは上手だったけど、オーケストラはイマイチ。かなり演奏が荒く、ずれるところも何箇所かあり。特に前から3列目だったってこともアラ探ししやすかったのかもしれないが、聴きながら、所詮はサンフランシスコ響、二流だなと自分を納得させてました。
これじゃ、メインも期待薄だなぁと思ってしまいました。ところが、メインの演奏はがらっと変わって素晴らしいものでびっくり。演奏者も気合入っているのが分かります。ひょっとすると、その理由の一つはビデオ撮影かもしれません。
この日のメインの演奏はビデオ撮影されました。ステージ周辺にはあちこちにカメラが設置されていました。演奏者の頭上にはビデオカメラのクレーンが吊られ、ステージ奥には3箇所カメラが設置、客席の一番前にはステージの端から端までレールが設置されて、そこにもリモコン操作で動くカメラが置かれてました。なんでもPBS(アメリカの公共放送)と組んでのビデオ撮影だそうで、ひょっとしたらTV放送されるのかも?されたら僕が映っている可能性大ですよ!だって、前から3列目ですからねー。
休憩時間中に動作確認しているカメラ。これがホールの右端から左端までレールの上を走ります。高さも変わるし、カメラの向きや角度も当然変わる。この写真を見ると、演奏中みたいに見えますが休憩時間ですので。
カメラが伸びたところ。演奏中にこのカメラが左右に移動して、伸び縮みするのは本当に気が散る!止めてくれ~、飛び出してケーブル抜いてやろうかと思ったほど。たまたま今日、前に座ってしまったがために一層気が散る結果となってしまいました。カメラ脇に立っている人はカメラチェックしているスタッフで指揮者じゃないです。
動き回っては伸び縮みして視界を遮るカメラは煩わしくて音楽への集中が何度も邪魔されましたが、でも、やっぱりプレイヤーの近くで演奏を聴くってのはいいものです。マイケル・ティルソン・トーマスの指揮も派手で見栄えがしますし、弦楽器も思ったよりも上手でした。っていうか、やればできるじゃん!! 今まで何度もサンフランシスコ響を聴いていたけれど、アラが目立つオケでアマチュアの延長じゃんみたいに思っていました。が、今日、ちゃんとやればできるってのが分かりました。これなら十八番にしているマーラーも生で聴いてみたいかも。
ところで、幻想にはコルレーニョって言って、弦楽器の弓の棒の部分で弦を叩く演奏方法があるんですが(通常は弓の毛で弦をこすって演奏しますよね)、コルレーニョしてなかったっぽかったです。ばちばちとコルレーニョしちゃってくださいよ、プロなんだから。
さて、最後にこの幻想交響曲のプチ解説でも。
この曲、幻想という響きが何とも魅力的じゃないですか?が、この曲は、奇想天外と言うか、ぶっ飛んでいるというか、かなりイっちゃっている曲です。作曲家のベルリオーズは自分の失恋の経験からこの曲を作曲したんですが、曰く「失恋した芸術家がアヘンを飲んで自殺を試みるが死に切れずに夢を見る」のを曲にしたのだそうです。どうぞご勝手に夢でも何でも見てくれと言いたいところですが…。そして、各楽章にも標題がつけられています。それによると、夢の中で芸術家は思いを寄せていた女性を殺害し、自分はギロチン台に送られ首が切り落とされ、そして地獄へ落ちて魔女たちの饗宴を見るのだそうです。
なんとも、想像たくましいというか…、そんなの自分で考え付いても人には恥ずかしくて言えん!と僕なら思ってしまうのですが、そこが凡人と天才の違いでしょうか。
この曲には全楽章を通して物語になっています。そして、いくつかの場面では想いを寄せていた女性が登場します。そこでは必ずその女性の旋律が流れます。
現在でこそ、ある特定の人物が登場するときに、その人のテーマが流されるってのは普通ですよね。例えば、スターウォーズでダースベーダーが出るときには、ダースベーダーのテーマ(って言うのかな?)が流れる、お笑い番組で江頭2時50分が登場する時には、布袋の曲が流される(ちと違う?)みたいな。
幻想は、そのハシリでもあるわけです。
もっと言うと、標題がついた音楽ってのも幻想がハシリですね。音楽で物語が語られるみたいな。幻想以前には音楽は音楽でしかなかったのです。ちなみに、オーケストラの編成もめちゃくちゃでかくなっています。そんなあれもこれも取り入れながらも音楽としてちゃんと完成している、そして聴いていても楽しいってのがベルリオーズのすごいところです。
芸術家ってのは、一般人が分からんようなことをして、新たな分野が開拓され、後世に引き継がれさらに洗練されてその分野が確立されるのでしょうね。そういった意味で幻想交響曲のポジションは音楽史のターニングポイントだったと言えます。
投稿者: Franklin@Filbert 投稿日時: 2007年12月5日(水) 10:12- 参照(284)
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