霧に包まれるゴールデンゲートブリッジを渡り、牛や羊がのんびりと草を食む牧草地を通り過ぎ、周囲にぶどう畑が広がりだしたその先に、ガラクタを並べたアンティーク店がちらほら見え出すと、セバストポール(Sebastopol)の街はもう目の鼻の先。

サンフランシスコから離れた、アジア人なんてほとんど見かけないこのワインカントリーの小さな街の一角にも、ラーメン屋がある。

セバストポールを観光している日本人がこの店を見つけたとしても、まず入ろうと思う気は起こらないことでしょう。せいぜい、店の中を眺め、勘違いラーメンを出す店がこんな辺境にまであるんだなと笑い話にするのが関の山。

が、人づてで、この店のラーメンが美味いと聞く。

となれば、一度は足を運んでみるべきか。しかし、今まで、何度「うまいラーメン」なる噂に踊らされて、遠方まで車を走らせ、玉砕してきたことか。今回も、失敗談がひとつ追加されことになるのは目に見えて明らか。

ただ、今回、この店を信頼しても良いんじゃないか…、いや、騙されてもみても良いんじゃないかと思う理由がひとつ。それは、このラーメン屋の店名が、「ラーメン外人」と名乗っていること。

店名に、自虐的に「外人」とつけたのは、自信の表れなのではないかと。
仮にハズレだとしても、「ラーメン外人」と名づけたその心意気にあっぱれと言いたい。

と、淡い期待に掛けて、遠路はるばるセバストポールへと車を走らせる日本人2名。

到着した店の入口には、日本を思わせる紅葉が置かれ、そのとなりに堂々と「外人」と書かれた看板が。
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店は、にぎやかな通りに面しているが、そちらにあるドアは締め切られている。入口は、その通りと反対側の駐車場側にある。

店内に足を踏み入れると、まずは長いバーカウンターがある。その向こうがダイニグエリア。天井は高く、随所に日本をイメージさせるインテリアが並ぶ。

ちなみに、この店、つい先日まで内装工事のため一時休業していたそう。店内はどこか懐かしいようで、それでいてモダンな雰囲気。

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壁には、北斎や広重といった有名作品とアメリカンカルチャーが融合した作品が展示即売されている。例えば、北斎の絵にスパイダーマンが描かれていたりといった具合。

こちらは壁に描かれた餓鬼の絵。古風な絵のようで、良く見ると、配膳していたり、掃除をしていたりとなかなか面白い。
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キッチンにひとり日中韓のいずれかと思われるスタッフが一人いたが、それ以外はすべて非アジア人。

さて、肝心のラーメン。

メニューにあるラーメンは、醤油ラーメン、スパイシータンタンメン、シイタケ味噌ラーメンの3種類。若いアメリカ人女性のサーバーにお勧めを聞いたところ、醤油を薦められたのでそれをオーダーする。ラーメンはいずれも一杯$15とかなり強気な値段設定。

メニューには、醤油ラーメンの麵は、ライ麦を練りこんだライヌードルが使われているとある。スタッフに聞いたところ、この店では麵も手作りなのだそう。

ほどなくしてサーブされた醤油ラーメン。

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どんぶりは小ぶり。このサイズのラーメンを出す店が多いが、これで$15はチト高い。
卓上には、レンゲ、箸、フォーク、ナプキンが置かれている。レンゲは瀬戸物、箸は割り箸ではなく、木製の箸。若干太めで武骨さがあり、使い勝手が良いとは言えないがどことなく愛嬌がある。

スープは、鰹節と思われる魚出汁がベースで、ほんのりと醤油が香る上品な味わい。

基本トッピングは、ワカメ、ネギ、シナチク、キクラゲ、半熟タマゴ半分、ネギ、チャーシュー。

チャーシューは箸でつかむとほぐれるほどに柔らかいが、炙ってあるために香ばしく、食欲をそそられる。

ライ麦の入った麺は、茶色身ががった色をしている。

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麺は細麺で、ライ麦のためか若干、蕎麦のような香りがある。素朴な味わいで、どことなく田舎っぽさがある。

一方のスープは出汁がよく効いていながら、どちらかと言えばあっさり系。麺が田舎風とすれば、こちらはどことなく高貴な雰囲気がある。

見た目にも丁寧につくられているのが分かるラーメンは、上品で、美味しく、スープは最後の一滴まで、美味しくいただきました。

この外人ラーメン、名前がそういうように、日本人ではなく、アメリカ人シェフによって作られたラーメン。

かつては、この外人ラーメンは、他のレストランの厨房を借りてその店が営業していないときに営業するといったスタイルではじめたそうだが、ついに自分の店を持つに至ったのだそう。

現在の店は、かつてイタリアンレストランだったそうで、天井は高く、オープンキッチンスタイルでバーカウンターも併設。外人ラーメンになってからも、それらは生かされていて、カウンター内で白人シェフがラーメンを調理する姿を見ることができる。

僕たちは、土曜日の正午過ぎに入店したが、店内はラーメンを食べるお客でほぼ満席。どうみても、あまりラーメンなんて食べないだろうと思われる白人のおじいさんまでも、不慣れな箸を使いながらラーメンを食べている姿に、ラーメンブームの広がりを見た思いがした。

現在では、居酒屋メニューもはじめたそうで、ラーメンの完成度の高さから、居酒屋メニューも期待できそう。ちなみに、この店、ミシュランリコメンドにもノミネートされている。

ラーメン外人のラーメン、確かに美味しかった。が、このラーメンを食べるために、ベイエリアからセバストポールまで足を運ぶ必要はないと思う。もし、近くに足を運ぶなら、行ってみる価値はあるかと。

ただ、日本人ではないシェフが、ここまで完成度の高いラーメンを作っているという事実はなかなかの衝撃で、それを実感・体感するために足を運ぶのはアリだと思う。

セバストポール界隈はワイナリーが多くあるので、ワイナリーめぐりとあわせて、ランチまたはディナーにラーメン外人に立ち寄るのは悪くないかと。

今のところ物珍しさもあって店はにぎわっているだろうが、この先、ラーメンがこの街でも定着するかどうか、見守って行きたい。

※以前はこの店、週末は土曜日のランチタイムしか営業していなかったが、現在は他のレストラン並みの営業時間になったので行きやすくなりました。

Ramen Gaijin

投稿者: Franklin@Filbert 投稿日時: 2016年3月26日(土) 21:42