アメリカに来て仕事をするようになって学んだ、日米間の違いのひとつが電話の使い方です。
日本の会社では、管理職以上はともかく、ヒラ社員が自分専用の電話を持つことなんてあり得ませんでした。グループに1台みたいなのが当たり前なので、典型的な電話のやりとりは、プルルルル・・・「はい合成研です」、「あ、薬理研の◯◯ですが、△△さんいらっしゃいますか?」、「はい、少々お待ちください」、受話器を押さえて「△△さーん、電話です~」という感じでしたし、今でもそんなに変わっていないのではないでしょうか?
あるいは、上司の電話が鳴ったときにも「はい、☓☓課長席です」みたいに、たまたま居合わせた人が代理で出て、伝言をメモで伝えるみたいなことが当たり前でした。
しかしこちらでは、電話はひとり1台が基本。期間限定であれ何であれひとたびその会社で働くとなったら、派遣のアシスタントや学生のサマーインターンに到るまでデスクと電話はセットで与えられます。それくらいひとりひとりに必需品という認識なわけです。
そして各電話には必ずボイスメール機能があるので、他人の電話に出ることは絶対にあり得ません。自分宛ての電話でも、液晶画面を見て出るか出ないかを判断し、誰かと議論中だったり、明らかなセールスの電話だったりした場合、あえて受話器を取らないというのもよくあること。大事な用があるならメッセージを残してくれるはずなので、それによって対応すればいいからです。逆にメッセージが残っていない場合、大した用件ではなかったのだと判断できます。もちろんラボなどにある電話は共通なので、居合わせた誰かが出ますが、そういう電話は基本的に発信専用で、着信はほとんどありません。
日本だと、留守番電話にメッセージを吹き込むのは今でもけっこうためらう人が多いと思いますが、こちらの人々はそういうことに照れも面倒くささも感じないようで、メッセージを吹き込むことに躊躇しませんし、むしろボイスメールにボイスメールで返答するようなコミュニケーションなんていうのも日常茶飯事。ある意味電子メールと同じように、各自の都合に合わせてコミュニケーションできるわけで、実際そういう使い方をされています。
だから仕事上の電話をかけるのに、考えてもわかるはずのない相手の都合を心配する必要はそれほどありません。日本だとかかってきた電話にはとりあえず出なければいけないみたいな感覚が強いのかも知れませんが、相手の方で、電話に出る出ないの選択をするだけという認識になれば、電話は緊急の場合だけみたいに気にする必要もありません。
おそらくもうひとつの理由はこちらの場合、内線はもとより、周辺地域内での通話はフラットレートといって、一定料金で通話時間無制限なシステムが一般的なこともあると思います。これは家庭の固定電話も同じです。ですから、会社の電話を私用に使うのも(ローカルな通話においては)概ね黙認されています。
電話文化のもうひとつの大きな違いは、電話会議でしょうか。アメリカは国内でさえ東と西で3時間の時差と距離があり、ハワイまで入れれば6時間の時差があります。ビジネスは大陸をまたいで行われますが、これをいちいち移動するのは馬鹿げてますので、電話会議が日々行われます。日本は遠隔会議となるとこのステップを通り越して、なぜかビデオ会議でなければならないみたいな感じですが、仕事の話をするに当たって、ほとんどの場合ビデオは必要ありません。
スピーカーフォンでの会話だけでほとんどの用件は足りますし、スライドなどのプレゼン資料をシェアしながらディスカッションしたい場合には、Webexのようなサービスを使えば事足ります。どうしても相手の顔を見なければならない場合なんてないのです。私も以前はそうだったからわかるのですが、慣れないとなぜか電話会議には違和感を覚えるのですよね。でもひとたび慣れると非常に安価で便利なものなのですし、出張経費削減にもつながると思います。
投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2011年1月17日(月) 00:07- 参照(136)
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