先日、うちの会社で研究・開発してきた最初の薬がFDAから承認されました。フェイスブックでたくさんのイイネとおめでとうメッセージをいただき、大変嬉しく思っております。ただインサイダーとしてパブリックドメインに書けることにはいろいろ制限があるので、詳しく知りたい方は会社のウェブサイトに行ってプレスリリースを見ていただくなどお願いします。
ここではちょっとだけ、裏話っぽいことを。
この薬は、私とほぼ同時期に入社した同僚のちょっとした機転というか、そんなことがきっかけとなって誕生しました。彼がある化合物を合成しようとしていたところ、目的物がほとんど取れず、望んでいなかった副生成物がたくさんできてしまいました。彼はそれを単離、精製し、構造を調べて残念に思いながらもとりあえず生物活性のスクリーニングにまわしました。その副生成物に思いがけない活性(作用)が見つかり、その発見が元になって今回の薬ができたというわけ。
サイエンスの世界ではいわゆる「あるある」系の話なのですが、予想と異なる結果が出たときこそがチャンス!とは本当によく言ったものです。頭ではわかっていても、つい現場ではポイっと捨てたくなっちゃったりもするのですが、忘れないようにしましょうw。
途中で大手製薬企業に導出したけど3年後に戻ってきたりとか、紆余曲折はありましたが、結局最初から最後まで自社開発で、承認までこぎつけてしまいました。バイオのスタートアップベンチャーでこのようなケースは珍しいと思いますが、やればできる(場合もあるw)という実例が示せました。
振り返ってみれば、最初にこの化合物が合成されたのが2004年の後半でしたから、トータルで丸10年かからずに承認までこぎつけたことになります。大手がやっても10数年かかるのが常の医薬品開発ですから、比較的開発が早い外用剤とはいえ、上記のようなタイムラグも考慮すれば、けっこう記録的と言ってもいいスピードです。しかもスタートアップ企業が本格的に開発を進めた最初の化合物で最後までいってしまったというのもまた特筆もの。
医薬品の開発は決して努力だけで成功するものではなく、いくつかの場面で人知を超えた様々な幸運が重なる必要もあります。そういったあらゆる要素が組み合わさって、ほとんど奇跡的にすべてがうまくいったときに、初めて新しい薬ができると言っていいと思います。
スミマセン、自慢話みたいに見えると思います。そのとおりですw。でもこのブログをお読みいただいているみなさんには、それなりに興味おありの方も多いかなと思って。
そして、でも、なーんだ、と思われたかも知れませんね。そう、この化合物はワタシが最初に作ったわけではありません。もちろん同じプロジェクト、チームのメンバーではあったし、いろいろな意味で深く関わってはいますがw。じゃあ赤間は何したんだ?という点については、もうしばらくお待ちを。今回薬になった化合物のちょっと後にワタシが作った化合物が、現在臨床第3相試験のまっただ中で、その結果が出るまではもうしばらくかかりそうなので。
投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2014年7月10日(木) 23:23- 参照(249)
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