新薬の研究は、大なり小なりいつもこれを求めているといえます。立ちはだかる壁のひとつを打ち破り、最終的なゴールにぐいっと近づく成果を得る、これが言ってみれば新薬開発研究の醍醐味でもあり、この快感を求めて日々がんばっているという感じでしょうか。もちろんひとつの問題をクリアしても、当然また次の問題が出てくるわけで、新薬の上市までにはある意味エンドレスに近く続くのですが、それでもそういった局面を何度か経験すると、一見不可能に思えるようなことが実は可能であるということをかなり強く信じることができるようになります。そのことが、先の見えない新薬の研究を進めるドライビングフォースにもなります。こういったことはほんのたまにしかないのですが、だからこそ大きな喜びもあるわけで。忘れた頃にどーんというのが来ると、どわーっと勇気付けられたりするわけです。こうやって書いていると、もう想像がついているかも知れませんが、そうなんです。ちょっといいことがあったんですよ。このシリーズはやっぱりこのあたりで頭打ちなのかなーと思っていたものが、ある化合物を作ったところ一気に10倍くらい活性が上がって、よっしゃー!みたいなね(^^)。メディシナルケミストはビトロ(試験管)の活性にばかり一喜一憂しがちで、PK(体内動態)とか溶解性とか安全性とか考えてないと思われがちでしたが、それは過去の話。今どきのケミストは一応ちゃんと考えておりますです(笑)。今回はインビトロとはいってもcell culture studyなので、外用薬を想定した場合、かなりin vivo(動物試験)に近いものがあるわけです。しかも今回は、X線解析でのターゲット酵素と阻害剤の共結晶構造をもとにしたデザインという、私が正直いってあまり信用していない(^^;)SBDD (Structure Based Drug Design) 的な方法でデザインしたものなので、くやしいけど認めざるをえないというか、うれしい誤算というか、まあ結果オーライという感じで(笑)。何であれ、こういうのがあるからこの仕事なかなかやめられないなーと思うわけですな。ちょっと専門的な話で、他業界の方々には失礼しました。
投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2007年9月26日(水) 20:59- 参照(270)
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