僕は子供の頃から散髪が嫌いだった。

僕の実家から、車一台通れる程度の道路の反対側には床屋があって、物心ついた時にはもうその床屋で髪を切っていた。多分、散髪が嫌いだった理由は、あの無限にも感じる長い時間を動くことなくじっとしていなくてはならなかったからだろう。

やみくもに歳だけ重ねた今でも散髪はどうも苦手だ。ただ、理由は昔とは異なる。頭頂部の髪はめっきりと少なくなり、ヘアスタイルを選べるような状況ではなくなった。もっとも、自分の場合、過去、ヘアスタイルを指定したことなんて一度もなかった。ここだけの話、子供の頃から髪のボリュームが少なめで、髪を立てたり、分けたりすると広い範囲で頭皮が見えてしまっていた。今思えば、そこまで気にすることもなかったのかもしれないが、思春期の自分には、髪が薄いことが知られればクラス中からバカにされると思っていたことだろう。色気付き出した周りの友人らが思い思いに髪型を決めだしても、僕は髪をあげたりはしなかった。

時は流れ、冬の到来とともに木々が葉を落とすように僕の髪も少なくなり、なんとか残った髪は雪をいただいたように白くなった。でも、もう年相応になってきたと思うことにしよう。

今日、散髪に行った。中華スーパーRanch99の隣にある中国人経営の散髪屋だ。僕を担当してくれたのは、若い男性理容師で、20代後半くらい。青いYシャツに黒メガネをかけていて、パッと見はエンジニアのような出で立ちだ。

彼が聞く。「どんなふうにしますか?」

出た。一番苦手な質問だ。この日は自分の心の思うがままに素直に答えた。

「髪型はもう気にしてないので、適当にお願いします」

すると、彼は声をあげて大笑いした。一般には失礼な行為だと思うが、きっとこんなふうに答える客はいないのだろう。笑われたことに対しては不快に感じることはなく、素直に笑いとばしてくれたことはむしろ清々しく思えた。

これでお互いの緊張がほぐれたのか、散髪しながら、彼も思うところを口に出して来た。

「頭頂部の髪が少ないけど、これは僕にはどうしようもできないよ。ソーリー!」

「白髪は自分で染めているの? 染めるならダークブラウンが良いよ。そして、塗ったあと20分は放置した方がいいよ」

「横で分けて、頭頂部の髪を隠す? 前に下ろすよりは分けた方が薄さを誤魔化せるよ」

僕も返す。「側頭部の髪で頭頂部の薄毛を誤魔化すスタイル、日本ではバーコードって呼ぶんだよ」(笑い

と、まぁ、こんな感じで、この日の散髪は終了。

従来のケースだと、髪切る側は薄毛のことには触れないようにと妙な気遣いしてくれているのかな?みたいな雰囲気を感じてしまっていたが(自意識過剰なだけかも)、今回はそんなことなく散髪終了。この調子でこれから行きたいものです。

投稿者: Franklin@Filbert 投稿日時: 2019年3月21日(木) 21:23