週末、同じコミュニティに住むTさんに久々に会った。Tさんは初老のアメリカ人で、いつも気さくにぴろ子に楽しげに話しかけてはお菓子をくれる。そういう訳で、ぴろ子もTさんのことが大好きだ。ちょうどTさんは、車に荷物を積み込んでいたところだった。どこかへお出かけ?と聞いたところ、その日の夕方の便でバルセロナに行くという。旅行かと思いきや、バルセロナでスペイン語を最低2ヶ月習ってくるとのこと。スペイン語ならこの界隈でも簡単に習えそうなものだが、話では、既にTさんはある程度スペイン語が話せるが、スペインのスペイン語を勉強してきたいのだという。
彼のその向上心と情熱に圧倒されながら、数ヶ月後の再会を約束して、その場を離れた。
そして、今日、たまたまぴろ子とコミュニティ内を散歩している際に、Tさんの家の前を通った。そして、驚いた。
その家の前には、For Sale の看板が出ていたのだ。
Tさんは、家を売ってしまうのか。バルセロナに行くという話は作り話だったのだろうか。週末に立ち話したのが最後のお別れとなってしまったのだろうか。どういう事情か良く分からないが、Tさんの連絡先も持ち合わせていないので、確認することもできない。
どういうことなのだろうかと思いつつ、散歩を続けると、ウチのユニットと芝生を挟んだ反対側のユニットに住む女の子が一人で遊んでいた。彼女はぴろ子よりも4歳年上の7歳。2年前に僕たちがこのコミュニティに引っ越してきた当時、何度か会ってぴろ子と遊んでくれた。彼女は自分のボールをぴろ子にくれたりもした。その後、会う機会がめっきり減ってしまい、お互い疎遠になってしまった。
最初は二人ともお互いに意識しながらも、別々に遊んでいたが、すぐに打ち解けて二人で遊びだした。彼女の母親も家から出てきたので久々に挨拶をする。こんなに仲良く遊んでくれるなら、もっと頻繁に遊ばせれば良かった。これから、そうしようと思った矢先、母親から、「実は、再来週、イーストベイに引っ越すの」と告げられて驚いた。彼女たちはその家を借りているそうだが、オーナーがその家を売ることにしたのだそう。彼女たちもFoster Cityの生活をとても気に入っているとのことだが、どうしようもなく引っ越すことにしたのだそうだ。
昨今の住宅価格のバブルのため、今が売り時と思うオーナーが多いのだろう。
Tさんにしろ、この家族にしろ、良き隣人が去ってしまうのは寂しいものです。
ぴろ子とその女の子は、夜7時半になってもエンドレスに遊び続けていた。女の子の母親も既に夕食の時間になっているのに、二人があまりにも楽しそうにしているので、呼び止めるのをためらっている雰囲気がある。そのうち、そろそろ潮時という仕草を見せたので、家に帰って夕食にしましょうとお互いに呼びかけた。が、女の子もずっとぴろ子と遊びたいのか、二人で鬼ごっこでもするかのように走って逃げてしまった。こんなに二人で遊んでくれるならもっと早くから遊ばせていれば良かった。この日は、また遊ぶ約束をさせて家に帰ったが、再来週の引越しまであと何度遊ぶことができるだろうか。
そのうち新たな家族がこのコミュニティに移り住んでくるのだろうけれど、別れは寂しいものです。
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