今から30年以上前になるけれど、高3の3月、当時の共通1次試験(今のセンター試験)、そして2次試験を終え、合格発表も終わってあとは卒業式を待つ、そういうタイミングだった。

私は悩んでいた。受けた大学は1大学1学部のみ。ただし私が受けたその工学部は、出願の際に学科を第6志望まで書く欄があった。当時の私の志望は電気系または応用物理系だったのだけど、あと4つ欄があるので、とりあえず埋めた。

合格発表を見に行くと、上記2つの学科は落ちて、おそらく第4志望くらいに書いた、化学系に合格していた。

高校時代、化学はかなり苦手だった。物理も化学も似たようなものだろうといえなくもないのだけれど、当時はとにかく苦手で、成績も5段階中の2とか取っていた。いわゆるアヒルである。

だから悶々と悩んでいた。もともとの希望の学科を目指して浪人すべきか、あるいはせっかく受かったのも何かの縁、そのまま化学の道に進むべきか。

そんなある日の下校時、学校から最寄りの地下鉄の駅に向かう道すがら、1年生のときのクラス担任でもあり、3年次も数学を教わっていた北原先生といっしょになった。

「赤間は進路どうなったんだ?」みたいなことを聞かれたのだと思う。
私は思わず上記の状況を説明し、迷っているんですと言った。

すると北原先生はこう言われた。
「ボクは物理と数学、どっちでもよかった」

私 「は?」

北原先生 「どっちでもよかった」

北原先生は数学の先生だった。本当にちゃんとした数学の先生だった。でもその時は間違いなく物理、数学、の順で言われた。

私 「そうなんですか」

北原先生 「うん、本当にどっちでもよかった」

そしてそれ以上は何もおっしゃらなかった。
いつも背筋がぴんと伸び、視線がまっすぐな方だったけれど、そのときもまっすぐ前を見ておいでだったような気がする。

その後、私はぐるぐると考える。そういうのもありなのか・・・。
それからしばらく考えた末、合格した化学系学科に進むことに決めた。

その後大学院にも進み、気がつけば以来25年ほど、ずっと化学を仕事にしている。

それが正しいとか正しくないとか、そんなことはわからない。ただ事実としてそういうことになった。楽しいことも楽しくないこともあったし、ひょんなきっかけから途中でアメリカに移住することになったりしたけれど、今のところ後悔は感じていない。

実は将来、今までの化学とはちょっと違う、やりたいことがある。それはそれでいいじゃないかと思っている。

もし若者から同じような質問を受ける機会があったら、私も言おうと思っているw

「物理と化学、電気、電子、どれでもよかった」

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2013年11月2日(土) 23:55