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夢の国モンタナ

私にとっては願ってもないエツセイのネタ探しのチャンスだ。旅 行の費用はブッシュ大統領からアメリカ経済再生のためにもらった 600ドルを使うことにした。「家を出ないとエツセイは書けない」 というTVファン誌社長のいつものご意見を実行することにもなっ た。嫁はん、バブと私三人で、私がバブの車を運転して行くことに なった。出発したのが、七月二一二日だった。ここカリフォニアのラ ックウッドゥからカナダとの国境まで六時間ほどのところにあるモ ンタナ州のコーバリスという小さな町までは1600キロある。老 人と一緒の車の旅は二泊三日かかった。
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Corvallis, MT : モンタナ州コーバリスの秋 写真はここから

モンタナの自然も気候も住民も良かった。アメリカにこんなにも 住みよい所があるのかと私達は思った。東西の山の天辺には夏なの にまだ自い雪が残っている。のどかな広い牧場が広がる、噴水が勢 いよく高く上がって、水を撤いている。木がある、林がある、森が ある。少しだけ肌を刺すような乾いた風がある。それは絵で見るヨ ーロッパのアルプスの麓の町の景色に似ていた。町から車で10分 ほどのティナの家は、まるで公園の中に白い家があるようだ。一面 緑の芝生の大きな庭は隣の芝生と続いていて、柵もなく、塀もなく 土地の境界線もない。百年以上もなる大きなコットントゥリー という木が何本もあり、木蔭がいっぱいだ。その木蔭には外で食事 をする椅子とテーブルが置かれている。緑の芝生に、白いテーブル と自い椅子がよく似合う。芝生の上を放し飼いの七、八羽の鶏が餌 を探し回っている。犬のマリーが走り回っている。庭の横には500坪ほどの柵をした牧場がある。二頭の子山羊が暴れまわっている のを親山羊が見守っている。

裏へ回ると、小さな野菜畑がある。イチゴもある、日本大根もあ る、日本のなすびもある。この日本大根も日本なすびも私達の影響 だ。小さな小川も流れていた。二羽のアヒルが泳いでいた。朝起き て何十年振りかに鶏小屋で、生みたての鶏の卵を取った。アヒルの 卵も取った。産みたての暖かい卵の手触りが遠い昔の故郷喜界島を 思い出させてくれた。第二の人生を"自然と共に生きる、動物と共 に生きる"そう感じたのは私だけではない、バブも嫁はんもそう感 じた。そして口に出して言った。

裏庭でやったバーベキューに集まった沢山のアメリカ人は白人ば かりである。人種のるつぼのロスアンジェルス、サンフランシスコ とは全く違うアメリカ社会だ。それもほとんど最近カリフォニアか ら引っ越してきた白人達ばかりである。一時、カリフォニアの白人 達が沢山シアトルヘ引っ越したが、一年に六ヶ月以上も降る雨に嫌 気がさして、戻ったという話はよく聞いたが、ここへ来ている人達 は「雨が少ない、雪が少ない、その雪も乾いていて、服もそう濡れ ないと言う。そう暑くもない、気候がいい。車で一時間以内で、い ける西の山、東の山ではスキーもできる。川がある、湖がある、釣 りができる、ハイキングができる、キャンプができる。家が安い。 カリフォニアの家を売ったらここでは二軒の家が買える。生活がし やすい」、と口を揃えて言う。そして最後に、締めくくりに出る言 葉は「カリフォニアに帰ったら、モンタナはいい所と言ってくれる な」であった。

私達も、モンタナのよさとティナの友情、親切に引かれて、モン タナに引っ越すことも思い浮かべた。ミイラ取りがミイラになりか けた。でも自分で八年かけて手造りした家、病で倒れて身体障害者 になった家、私の本を出版した家、大工から物書きの端くれになっ た家、私に人生で一番楽しい思い出、苦しい思い出を作った家、そ して、引越しの面倒さを考えたら、やはり私はブラッドレーの家で 死にたいと思い直していた。

着いて二日目の日に異変が起きた。あれだけ、「住みなれた家で 死にたい」と言っていたバブの心が変わった。娘の家の近くに古い 小さな家を現金1500万円で買ってしまったのだ。「自分の傍で 親の最後の面倒をみたい、私の人生の一番大きな夢が叶った。私の アメリカンドリームが叶った」と一番喜んだのは娘のティナだった。 アメリカにもまだ、こんな親孝行娘がいてはります。「トム、初美、 あんた達二人のお陰」と大粒の涙を流して、私と嫁はんを抱きしめ た。ティナと私の「バブをモンタナヘ引越させる」芝居は成功裏に 終わったのである。アメリカ人と日本人の友情が、言葉という壁を 乗り越えて、実現できて、胸の奥の奥までが熱くなった瞬間であっ た。でも、本当に夢の国のようなモンタナだった。「住みなれた家 で死にたい」という老人の重たい思いを変えさせたモンタナに、私 の心もまだ揺れ動いている。

私達三人がラックウッドゥに帰ると折り返し、ティナと旦那のス ティーブがモンタナから、そしてアラスカから、長男のグレンが来 て引越の準備を始めた。バブは九月に"住み慣れた死にたい家"か らモンタナヘ引っ越すことになった。

by フリムン徳さん

プリムン徳さんはエッセイ本「フリムン徳さんの波瀾万丈記」を出版されています。

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いつもご訪問と沢山の応援を有難うございます。 今日も暑さに気をつけてお過ごしください。


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投稿者: カルフォルニアのばあさんブログ 投稿日時: 2012年7月31日(火) 10:30