新田次郎さんの山岳小説、歴史ものは20代の頃よく読んでいた。そしてそのご子息である藤原正彦さんのエッセイは、何度も繰り返し読むほどの大ファンだ。それにしてもこの 「つぶやき岩の秘密」 というタイトルは、新田さんの著書にしてはかなり異質な響きがある。

主人公は小学6年生の少年。最初の数ページを読むだけでこの子の生い立ちがわかり、日々の生活がわかる。ひとつひとつのセンテンスが短く、情景がすぐ目に浮かぶのだ。この少年がある日、不思議な情景を目撃したところから物語は謎を帯びてくる。そしてこの少年の好奇心は日々膨らみ、かなり危険を伴う冒険へと繋がる。

・・・・途中、これは新田さんが自分の息子である藤原正彦さんのために書いたものではないか? と思ったのだが、実際は孫のために書かれたものだそうだ。

この本の中には、潮の満ち引きをはじめとする自然科学、算数、地理などがでてくる。少年は困難に一人で立ち向かうとき、これらの自分の持つ知識と経験を生かして解決に向かう。残された謎の辞世の句の場面では、日本語の美しさがさりげなく語られている。そしてなによりも、少年と家族、少年と先生、少年と謎の老人という関係を通して、藤原家の話によく出てくる武士道の根本になる道徳観を感じる。

1972年刊行、1973年にはNHKでドラマ化されている。ボクが中学にあがるころで、この当時は少年ドラマや冒険小説にのめり込んだはずなのに、このドラマの記憶が一切ない。残念。でもDVDがあるそうなので今度探してみよう!!

「つぶやき岩の秘密」 石川セリ

余談ですが・・・・いくつの頃だったか覚えてないけど、初めて異様な気持ちを心体ともに覚えたのは、「トムソーヤの冒険」 の中で、トムソーヤとガールフレンドが洞窟探検の最中に、ひとつしかないチューインガムを、交互に噛む場面でした。

投稿者: 寿司豊味ととろぐ Sushitomi 投稿日時: 2012年7月23日(月) 11:03