何度か書いている(こちらとかこちらとかこちら)アミノフラボン誘導体AFP-464ですが、開発を進めているTigris Pharmaceuticalsのプレスリリースによると、フェーズ2が始まったようです。なにげに久しぶりに検索かけてみたら、昨日プレスリリースが出ていたという、まるで霊感が働いたかのようなタイミング。それはともかく、対象はエストロゲンレセプター(ER)陽性の乳癌。さらにその中で、AhR(Aromatic hydrocarbon Recepter)が細胞質にある場合という条件付きとなっているようです。
この治験は、AFP-464単独および、アストラゼネカ(より正確にはZenecaの前身のICI)が開発したFaslodexという薬とのコンビネーションの2本立て。Faslodexというのは、ステロイド骨格のエストロゲンを基にした、エンストロゲンのアンタゴニスト(拮抗剤)です。タモキシフェンと違って、パーシャルアゴニスト作用がない、Selective Estrogen Receptor Down-Regulator (SERD)と呼ばれる薬です。
試験官やマウスレベルの実験で、アミノフラボンがER陽性の乳癌によく効く傾向があるというのはかなり初期からわかっていましたが、その後の様々な研究で、AhRが関与していることがわかり、さらにAhRが核内ではなく細胞質に局在しているタイプの癌細胞が、アミノフラボンによく反応するということがわかってきました。
そういったあたりを総合的に考慮し、最速で認可を得られそうな適応を考えた結果なのだと推測します。もともとNCI(National Cancer Institute)がこの化合物に注目したのは、すでにたくさん薬がある乳癌だけでなく、有効な薬がほとんどない腎細胞癌に効く可能性が見出されたことが大きいのですが、最初からスーパータフな相手(腎癌)と戦うよりは、多少なりとも組みしやすい相手(乳癌)から攻めるというのは、スタートアップの諸事情を考えれば、やっぱりそうなるのかなという気も。
それにいくら乳癌には薬がたくさんあるといっても、すべての乳癌が治るわけでは全然なく、まだまだ新しい薬のニーズはあるわけです。上記のような一部の乳癌であっても、もし一定以上の効果があるのならば意味があります。そして多くの抗癌剤は小さく始まり、効果を確認しながら徐々に適応を広げていきます。がんばれアミノフラボン!
投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2011年5月27日(金) 21:49- 参照(130)
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