昨日は入社後のことを書きましたが、今日はその前の段階でのこぼれ話を。連日の長文になります。なんでいちいちこんなにまじめな文章しか書けないんだろう(^^;)と自分でも思いますが、興味のある方だけ読んでくれればいいのでまあいいか。ちなみにこぼれていないメインのことは、こちらにありますのでよかったらそうぞ。こちらのバイオテックスタートアップは(日本でもそうかも知れませんが)、特に初期はコネクションベースで人を増やしていきます。以前の同僚(あるいは上司、部下)というのが最も多いパターン。それだけでは補えないときに、そういった人たちからの紹介という形で、原則として個人のネットワークを通じて採用を進めます。私が今の会社に応募したときには、この会社に何のコネもありませんでした。本当にまったくなし。ですから、応募のレジュメをウェブサイトのjobs@というアドレスに送ったくらいです。通常こんなルートで来る応募は見向きもされず、ほとんど捨てられます。それがどういうわけか、Hiring Managerに届き、目に留めてもらえたというのは後から思えばラッキーというか不思議というか、そのあたりの本当の理由はわかりません。でも応募してすぐにレスポンスがあったわけではなく、それは1ヶ月ほど経ってからでした。その間、返事がないので思い切って一度、会社に電話をかけました。出てくれたのは今もいる秘書さんですが、レジュメはちゃんと転送してあるから、待っていてくださいみたいなことを言われたと思います。その後しばらくして、連絡があったというわけです。この電話が私の運命に関わったのかどうか、それはまったくわかりません。6年以上経った今なら、その秘書さんに聞いてみることも可能ですが、当人が覚えているかどうか(笑)という問題がありますね。まず予備面接に呼ばれ、HiringManagerだったVPを含め数人と会いました。そのVPから、あなたのことは何かの機会に見たことか聞いたことがあった、みたいなことを言われました。私はそのVPのことなどまったく知らなかったので、は?それはいつどこでのことでしょう?と聞くと、彼もよく覚えてはいないけれど、とにかく見たか聞いたかしたことがあるみたいな感じで、とにかく名前に覚えがあったみたいな。私はそれ以前、ほとんどoncology(癌関係)フィールドのメディシナルケミストリー専門だったのに対し、彼は抗生物質(抗菌剤)のエキスパートで、あまり接点があったとは思えませんでしたが、あるいは誤解かも知れない(笑)彼の記憶によって、面接に呼ばれることになったようでした。もちろんこちらからは詳細なレジュメを送ってありますから、それを見た上での判断ということで、実際に何かのきっかけで私を知っていてくれたのかも知れませんが、あるいはまったくコネのない私を採用する可能性を考えたときに、社内の他の人たちを説得するための方便だった可能性もあるかなとも思います。入ってみてわかったことですが、当時いた社員はみなそれほどまでにお互いが以前どこかでの同僚、もしくはファウンダーのラボ関係の人たちばかりだったからです。何しろ当時、フルタイムの社員は10名あまり。ケミストリー以外のグループでも採用をしていたので、私が実際に加わった時は、15人目くらいでした。そんな段階で、誰も知らない、しかも英語すら怪しい人を採用するというのは、相当なリスクだったはずです。もちろんリスクはお互い様です(笑)。たとえ入社できたとしても、そんなちっぽけな、できて間もないベンチャーで大丈夫なのか?私にとって大きかったのは、Biospaceで求人情報とjob descriptionを見たときに、これはまさに自分のために書かれたようなjob descriptionだと感じたことでした。そう勝手に思い込めるほど、それはまさに当時の自分程度の経験を求めるものでした(英語のfluencyを除けばですが、^^;)。そして当時大した情報も載っていない会社のウェブサイトを見たときに、それでも何かおもしろそうな、将来もしかしたら大化けしそうな直感を抱きました。根拠は何もありませんでしたが、これは今乗るべきだ、みたいな本当にただの直感です。どれもこれも私の勝手な思い込みだったのですが、どうしてもこの会社に加わってみたいと思いました。別にそれが通じたとも思いませんが、結果的に後日面接に呼んでもらえたのです。さらに言えば、すぐに呼ばれなくてかえってよかったともいえます。なぜなら、その間に他の会社へ4回も面接に行くことができたからです。面接に行くたびに45分程度のセミナーと質疑応答をしますし、いろんな人たちと会ってあれこれ話をするわけで、英語は相変わらずおぼつかないながらも、それだけやればさすがに慣れてもきます。その上で本命の面接に臨むことができたのです。予備面接の後、フルインタビューに呼ばれ、何となく採用を前提にしたインタビューだなあと感じつつ、終わってみれば期待通りオファーをいただけました。当時のHiring Managerはその後1年で会社を去ってしまったので、今となっては真相はわかりませんが、後から思うに,、私以前に何名かのcandidateを呼んでいたことは間違いありません。でもどこかいまひとつだったのでしょうか。ところが私がやってきたケミストリーと経験年数が、当時想定されていた条件にたまたまぴったりで、しかもタイミングがドンピシャだったというのが、まあいわゆる「縁」というものだったのかなあとは思います。採用した後で、ここまで英語ができない奴だったとはという失望も与えた可能性は大ですが(笑)。まあ実際のところがどうだったかはさておき、どんな人もそれぞれにユニークな経歴を経てきているものです。ですから誰かの辿った道をなぞるなんていうことは不可能ですが、一所懸命やっていれば何とかなることもあるということは言えるのではないかと思うわけです。上記のVPのコメントがもし本当だとすれば、どこで誰が見ていてくれるかわからないので、学会発表なり論文発表なり、チャンスがあるときにはいつでもベストを尽くしておくことはとても大事だということが言えるでしょう。こんなことを書くと、まるで私が実は業界でそれなりに名を知られた研究者であったかのような印象を与えるかも知れませんが、そんなことはまったくありません。招待口演とか呼ばれたこともなく、それなりの数の特許出願と研究論文を出している程度で、世の中に大勢いるレベルの企業研究員だったことは疑いありません。以上、とりとめもないこぼれ話でしたが、これは2003年当時の話で、今とは状況もだいぶ違います。それでも少しでも若い方々の参考になれば幸いです。
投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2009年11月22日(日) 18:20- 参照(165)
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