昨日はJBCフォーラムがあって、こちらのバイオテックの内情に関して、いろいろおもしろい話が出ました。すべてオフレコということなので、残念ながらここでその内容に触れることはできませんが、多くの人々に共通する関心事がいくつかあることを再確認。例えば仕事の入り口、すなわちどうやってバイオテックの職を得るか、次に入ったらその中での昇進や昇給のチャンスはあるか、そして英語のことなど。しばらく前に自分のプロモーションキャンペーンの実況中継(笑)をしていましたが、時が経つのは本当に早いもので前回からすでに1年以上も経ってしまいました。そのアップデートも含め、研究職にはどんなステップがあるのか、その中での昇進のポイントなどについてご紹介したいと思います。ちなみに過去の関連エントリーはこれらちょっと主張してみるかPromotionその後アメリカのベンチャーのDirectorへの道?Scientist(研究員)はScientist I とかscientist II とかあってScientistの一番上は通常Senior Scientistとなります。おおまかな目安としては、フレッシュなPh.D.ならScientist I、数年のポスドク経験があれば、IまたはII。さらに数年の実務経験があればIIまたはIII。ポスドク、実務経験合わせて7,8年程度でSenior Scientistといったところでしょうか。Senior Scientistまでは、実務さえしっかりできれば、英語力はそれほどでなくても比較的すいすいと上がることができと思われます。場合によって、ゼロから数名のRA(Research Associate)や、自分よりジュニアなScientistをsuperviseすることもありますが、日本で言う主任研究員、いわゆる管理職のような感じではなく、あくまでシニアな(経験を積んだ)つまり上級研究員です。その上になると、会社によって若干違ってきます。以前の会社では、Group Leader → Associate Director → Directorという感じ。今の会社ではマネージメントラダーとサイエンティッフィクラダーとが一応分かれています。分かれたキャリアパスとはいっても研究職にとっては、これらは互いに行き来する可能性があるものです。マネージメントの方は、Associate Director → Directorとなりますが、サイエンティフィックの方にはAssociate Directorに相当するものがなく、Research Leaderというのが、Directorと同じレベルにあります。そして今の私がコレ。昨年(2008年)初頭、Associate Directorになりましたと書きました。で、次はDirectorということでプロモーションを(私なりに ^^;)プッシュした結果、今年(2009年)の頭に再度プロモーションをいただいたのですが、渡されたタイトルはDirectorではなくて上記のResearch Leaderだったというわけです。誰に聞いてもあまり響きがいいとは言えない(^^;)、そして業界でも聞きなれないタイトルですが、まあ当面仕方ありません。うちの部署にはすでにDirectorがいるとか、そこにはもちろん様々な事情があってのことなのですが、そのひとつとして、このレベルになってくると以前はそれほど問題にならなかった英語力がかな~り問題になってきます。Directorとなると、自分の部署のメンバーの信頼を得ながら、他部署のDirectorや会社の上層部に対してプレゼンしたり様々なディスカッションをしたりという頻度が上がります。しかもその相手となるVP以上の人たちはほとんどが英語ネイティブの白人。ラボレベルだと外国出身の研究者(特にアジア系)が大半なのに対し、飛び交う英語のスピードも内容もほとんど別世界となります。アクセントや発音の良し悪しはともかく、そのスピードについていって、相手が納得するような発言もできなければなりません。そういう観点から見ると、私の英語はまだまだなのは明らか。というかこんな程度の英語力にも関わらずよくもここまで引き上げてくれたなと思うほど。もちろん初期からのメンバーのひとりとして、これまでの会社としてのアチーブメント/パフォーマンスに対して相当な貢献をしてきていると自負してはいますし、その点を認めていただいた上での現在までのプロモーションとは思いますが、非常に優秀で口も達者な英語ネイティブのみなさんと喧々諤々のコミュニケーションが必要になってくると、正直かなり厳しいものがあるのも事実です。逆の場合を想像してもらうとわかりやすいと思います。日本企業で外国人を雇用して、その人はまあ日ごろのコミュニケーションは適当にこなす程度の、しかし明らかになまりがあり、時々不明瞭な日本語を話すとします。その人は真面目で、実務は人並み以上にしっかりこなします。知識、経験、生産性、創造性ともに水準以上。プレゼンテーションもそれなりにこなしますが、込み入った議論になると、発言の頻度が減り、しかも文法的にちょっとおかしな発言の割合が上がり、また大勢が参加するミーティングだと議論の内容を一部フォローしきれていないように見受けられます。もし管理職となれば、社外のパートナーやコラボレーターとの責任あるコミュニケーションも増えます。会社はそのような人をどのレベルまで昇進させようと思うでしょうか?やはり私の場合、最大の問題は英語力ということになると思います。だったら英語を何とかすればいーじゃん、ということになりますが、それはちょっと横に置かせていただいて(^^;)、そもそも英語がここまで問題になるというその問題自体を避ける方法のひとつ、しかも努力の総量さえ減らせる可能性があるのが、より若いうちに英語圏に飛び込むということです。いろいろな人を見ていると、やはり20代のうちが理想ですね。一昨日のワシントンDCで、空港からホテルまで乗ったタクシーの運ちゃんは若者で、けっこう話し好きでした。聞けばアフガニスタン出身で、パキスタンで教育を受け、2年半前にアメリカにやって来たとか。ほんまでっか?ビザとかどうしたん?と思ったけどそれは聞かずに、それにしては英語がうまいねと言うと(変なアクセントもなく私よりずっと上手だった)渡米前パキスタンで1年間トレーニングした。こちらに来てからは、ネイティブのガールフレンドができて、それで上達したと。私がそれはベストな方法だねというと、彼女には逃げられたけどね、といったとりとめもないこと(でもないか、笑)を30分ほどいろいろと話してました。もし彼の話が本当なら、トータル3年半ほどの事前&実地トレーニングでかなりペラペラの領域まで達してしまったということで、やっぱり若さかなと。もうひとつ、私がそんなに英語で苦しんでいるのなら、なんで英語での仕事を続けているの?という点ですが、苦しい場面というのはあくまでも全体の中の一部で、今回はそこを強調しているだけであって、いつも苦しんでいるわけではありません。最初の頃に比べればこれでもずいぶん進歩してるし。トータルではやりがいのある、エキサイティングな、しかも夢もある仕事を、それなりのrespectも受けつつ、かなり快適な環境でできていると感じているからです。だからこそ、そんな生き方もあるよということを、このブログで時々実況中継しつつ、シリコンバレーツアーでも紹介しようとしているというわけです。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2009年11月21日(土) 17:01