オバマ政権が必死になって保険制度を改革しようとしているが、ロン・ポールが「国の健康保険制度なんて社会主義的だ!」とCNNのラリー・キングで主張したりして、議会でもいまだに難航中です。じゃあ今のアメリカの保険制度はどういうものか、と言われると、わたしにはあまりに複雑でよく説明できません。簡単にわけると1.会社に勤める人が自分の会社を通して民間の保険会社の提供する保険を買う。2.貧困層はメディ・ケイド3.高年齢層はメディ・ケアで、中小企業とか自営業とか、失業中の人は無保険のことが圧倒的に多くなります。なおかつ、保険に入っていても、アメリカは「マネージドケア」システムといって、ものすごく色々な選択肢の商品から、「自分にあった商品」を選ぶことになるのですが、これがすごく複雑! -一回の診療費のうち、コーペイ(co-pay)という自己負担分(通常20,25ドルぐらい)の有無、 -年間の医療費に限度額を設定するかどうか(しなければ当然高くなる) -ブランド医薬品の処方を望むかどうか(ジェネリックでよければ安くなるが、すべての病気にジェネリック医薬品が効くわけではない)などなどあげればキリがなくて、結局、自分が毎月払える金額で折り合いをつけた額のプランを選ぶわけですが、病気になってはじめて、その疾病が実は保険ではカバーされないことがわかった、なんてのはザラです。アメリカ人は本当にこのように「色々な選択肢」を求めているのでしょうか?ただ、文化的な背景からいえば、アメリカ人は「色々注文をつけるのが好き」なのは事実です。日本人のように与えられた制度を所与のものとして受け取ることができる国民とは大違いです。わかりやすい例を挙げれば、アメリカで外食するのが(慣れない日本人にとって)いかに面倒かがあてはまるでしょう。アメリカの場合、「さあ朝ごはんを食べにいこう」と言われ、卵はどうする?スクランブル?サニーサイドアップ?イージーオーバー?付け合せはハッシュブラウンか、カントリーポテトか、フルーツかパンはイングリッシュマフィンかトースト、パンケーキか、トーストならどんなパンにするか?自分が何が好きなのかわかるまで、「選択肢の多さ」は日本人にとっては面倒なものです。ただ、最近アメリカ人の学者の間でも「選択肢の多さ=幸福」ではない、という研究をする人がでてきています。選択肢が多いことは選択の自由を意味するので、「自由の国アメリカ」では選択肢の多さは重要です。レストランでの注文から、小学校レベルからの選択授業、そしてもちろん大統領選挙まで。ただし、選択肢が多ければ、あるものを選択した結果、選択しなかった別の選択肢を選んでいたらどうなっただろう、という後悔が生まれます。アメリカのように上限がなく金持ちのいる国では、どんなに成功していても上には上がいるわけで、そこそこの生活をしていても、誰でも「もっと___をしていたら」という思いをしやすくなります。ちょっと脱線しましたが、そういうわけで、大多数の日本人は健康保険制度でそこそこ満足しているとは思うのですが、日本のようなシステムをアメリカに移植すれば、「お仕着せだー!」の抵抗が出ることは間違いないでしょう。現在アメリカで検討中のシステムは、日本のような制度ではなく、民間の保険会社から保険を買うことを基本的に義務付け、金銭的に余裕のない人には補助金を出す、というシステムです。今の「マネージドケア」システムよりは簡素化されるだろうとは思うのですが、なにより医療関連訴訟の訴訟金に上限を設定して、医者の加入する医療過誤保険の加入料が下がらない限り、患者の医療費用は下がらないでしょう。とにかく、アメリカは保険会社を含む金融企業と弁護士に費用がかかりすぎる国なのであります。それも「選択の自由」を担保するための費用なわけですが、、。
投稿者: みーぽんのカリフォルニアで社会科 投稿日時: 2009年11月5日(木) 17:58- 参照(242)
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