化学反応によっては、反応とともに発熱するものがあります。酸化反応などに多いのですが、こういう反応のスケールアップは特に気をつけないといけません。小さなスケールの時には発熱に気がつかない場合があるからで、これを一気にスケールアップして、試薬をどーんと加えたりすると、ある時点で反応が暴走を始め、フラスコから噴水のように吹き上げたり、最悪の場合爆発に至るからです。ちなみにいわゆる爆発というのは、瞬間的かつ暴力的に進む酸化反応というのがその正体です。合成化学を長年やっていれば、たいていの人は冷や汗モノの体験の一度や二度はしていることでしょう。実際に吹き上げてしまった経験のある人もかなりいるということは、合成実験室のドラフトの天井がしばしば汚れていることからも明らかですし(笑)。昨日ニトロ基の還元と書きましたが、これもその類の反応のひとつ。酸化じゃなくて還元なのに?と思われるかも知れませんが、酸化と還元というのは必ず対になっています。何かが還元されるということは、それに使った還元剤が酸化されているということなのです。だから自分の目的としては還元反応だと思っていても、それは同時に酸化反応でもあるわけです。亜鉛や鉄などの金属を還元剤として使う場合、これらの金属が酸化されて塩化物とか水酸化物とかを生じます。使い捨てカイロと同様、金属単体からより安定な塩化物、水酸化物、あるいは酸化物などになるときに、エネルギーを放出し、発熱するということのようです。この反応は通常加熱して行うのですが、今日なにげに10グラムスケールでやってみたら、どうも外からの加熱以上に勝手にかなり発熱しているらしいことがわかりました。そこでさらにスケールを上げ、加熱なしでゆっくり金属を加えていったら、それでもどんどん発熱して、溶媒が沸騰するほどに。加熱しなくても反応はうまくいくことがわかったのですが、いきなり加熱しながら金属を一気に加えていたら、噴水(^^;)になっていたかも知れません。これからさらにスケールを上げていくので、反応温度をチェックしながら慎重にいかねばと、あらためて心した次第です。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2009年8月27日(木) 21:53