スタートアップは先のことはわからないとか、今までに何度も書いてきました。一方で先日も書いたように、どんなに忙しいかとかは関係なく、有給休暇を流してしまう人はほとんどいないのも事実です。たとえ流すほどたまっていなくても、そこそこたまっていれば、使いたいときには使います。この点に関して、この忙しいときに・・・などと嫌味ったらしいことを言う人はまったくいません。たとえ外部の共同研究先とのミーティングなどがあろうとも、彼/彼女は今週バケーションだから、というひとことで済んでしまいます。本当にその人がいなければ進められない仕事なんていうのは、めったにないものですよね。そして会社という組織の中の仕事である以上、ある人がいないと成り立たない仕事というのは本来あってはいけないものともいえます。ある程度の遅れが生じるのは仕方ありませんが、個人事業ではないのですから、極端なことを言えば今日自分が交通事故で死んでも、誰かがきちんとフォローアップできて、必要なことはさくさくっと引き継いでもらえるような状態に毎日しておくべきだと思います。もちろん他の誰かが引き継いだら結果が変わってくる可能性は高いでしょう。研究職はルーチンワークではなく、アイデアやセンスや経験、狭い専門の中でもさらに細かい得意不得意などによっても実際の方向性は変わってきます。社員が突然事故死するなんてケースは予定も予想もできることではないので、このあたりは悩んでもしょうがないことですが、それでも最善と思われる、あるいはできる範囲での備えをしておくというのは意味があることだと思います。研究職の場合、というか有機合成化学者の場合、実験台上のサンプル類はすべて実験ノートのページ番号と対応していて、フラスコなどに入ったままのものでもそれが何なのかすぐにわかることとか、サーバー上の個人フォルダに保管しているファイルがそこそこきちんと整理されていて、担当している(いた)プロジェクトに関する重要な情報が簡単に引き出せるようになっていることとか。またちょっとした想像力とほんの少しの作業で防げる損害というのもたくさんあります。フラスコに入った大事なサンプルは、夜中に地震が起きても床に落ちたりしないように、ベンチ上に放置したりせず、パイプネットにきちんとクランプで固定しておくとか、大事な反応はたとえ何かの拍子にフラスコが割れても中身を回収できるよう、下に受け皿を置いておくとか。学校の年度がほぼ終了し、職場も徐々に夏休みモードに入りつつあります。去年の今頃は会社拡大直後で、入社1年以内の人が半分以上だったので、PTO(Paid Time Off: 有給)がたまってない人が多かったことや、ちょうど会社の引越しの準備でばたばたしていたこともあって、まとまった夏休みをとる人が少なかったような気がしました。でも今年はみんなPTOがたまってきたのでしょう。1週間とか2週間とか、時にはそれ以上、まとめて取る人が出始めました。バケーションで長期の旅行に出かける場合など、もしも戻ってこられなかったら・・・?なんてことまで考えて上記のようなことを確認してしまう性分ってどうなのだろうとは思うものの、アンディ グローブの名言 ”Only the paranoid survive” とは経営哲学だけではなく、そういう細かいことまで含んでいるのだと(勝手に)解釈しています(^^)。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2009年6月20日(土) 19:59