CNET Japanに、「Electronic Entertainment Expo(E3)」に関する記事が掲載された。(こちら)本記事では、ソニー、マイクロソフト、任天堂のゲーム業界大手3社は、ユーザーがより直感的にゲームをプレイ出来るための開発競争に突入した事を報じている。この開発競争は、コントローラー開発の事であり、これにより従来自分達をゲーマーとは思っていなかった大多数の消費者を取り込む事を狙っているとの事。コントローラーに関しては、任天堂が「Wii」に於いて、「Wiiリモコン」という革新的なコントロール技術(モーションコントローラー)によって多大な支持を得た。更に、任天堂は、「Wiiモーションプラス」と呼ばれるWiiリモコンの周辺機器をリリースしている。 Wiiリモコンは、内臓されている3軸加速度センサーにより、振った方向を検出でき、また重力を検出することによって傾きも割り出すことが出来る。しかし、これはあくまで静止時やゆっくり動かした時の話で、大きく素早く動かしている時、連続して大きく複雑に動かすような動作をした時は、重力の検出が難しくなるため、傾きの割り出しが困難になるという問題点があった。そこで、この問題を解決するために登場したのが「Wiiモーションプラス」である。 このWiiモーションプラスには、物体の角度や回転速度(角速度)を正確に検出するジャイロセンサが内蔵されている。初期位置(水平位置)からどれだけ回転したのかを検出するジャイロセンサは、大きく素早く動かした時であっても傾きを正確に捉えることができる。(Wikipedia参照) 私の記憶が正しければ、この「Wiiモーションプラス」には、米InvenSense社の多軸MEMSジャイロセンサーが採用された筈である。(こちら)米InvenSense社のSteve Nasiri氏(CEO)とは、米国時代に何度かお会いした事があり、非常に懐かしく思う次第。同氏は、センサー開発のエキスパートであり、主に重機向けセンサーの開発で成功している人物であるが、今回は消費者向けセンサーの開発であり、新たな挑戦だと言っていた事を思い出す。そして、この消費者向け製品の生命線を担っているのが、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる微細加工技術であった。同氏は、MEMSのエキスパートでもあり、従来の加速度センサー、角速度センサーが、素子として水晶結晶を利用しているのに対して、MEMSという機械的なアプローチによってセンサーを完成させる事も新たな挑戦だと言っていた。この微細加工技術は、感度と歩留まりの問題があったものの、サイズを小さく出来る(=コストを抑えられる)というのが最大の特徴である。 私見としてビジネス面を鑑みると、市場に広く流通しているWiiのコントローラー向け製品とは言えど、外付けのデバイスでは、出荷量を何処まで確保出来るのかは疑問が残るところであり、最終的には、携帯電話端末の様なMass Productに繋げられるかが、大きな成功の鍵になるのだと考える。尚、デジタルカメラ等では、同社製品の採用が始まっている。この多軸MEMSジャイロセンサーは、拡張現実(AR)の様な次世代アプリケーションには必須の技術であるが、一方で携帯電話端末価格の高騰化が懸念される中で、本当に普及度が上がって行くのかは注目したい所である。
投稿者: YES AND .blog 投稿日時: 2009年6月9日(火) 09:23- 参照(248)
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