かみさんの実家から30分ほど車を走らせたところに女川(おながわ)という街がある。街の中心は三陸特有の典型的な入り江の奥にあり、天然の良港を持ち、漁業の町として発展した。
この街は、東日本大震災の津波でもっとも高い死亡率(避難者・死亡者・行方不明者の総数に対する、死亡者・行方不明者の割合)となった街で、津波の高さは20メートルにも及んだ。
たまたま年末のNHK放送にて、女川の街にシーパルピア女川というショッピングモールがオープンしたことを紹介していたので、どのような施設なのか覗いてきた。
シーパルピアがあるのは、JR女川駅前で、駅を降りると、正面に海が見え、その両側にショップが並ぶ。日本の古き商店街というよりは、アメリカで見られるようなショッピングモールといった佇まいで、なかなかお洒落な雰囲気がある。
一番海に近いところには新鮮な魚介類を販売するハマテラスと名づけられた市場があり、その一角にはレストランが並ぶ。かねてから女川で名前が知られた「おかせい」というお店も、ハマテラスに移転したので、ここで食事をした。
おかせいのレストランはカフェテリアスタイルで、入口の自販機で食券を購入し、席に座る。あとは、食券に書かれた番号が呼ばれたら自分で取りに行く。お茶や水も自分で取るセルフスタイル。席数はそれほど多くはなく、街の食堂といった感じ。
だが、食事内容は充実。特選女川丼はこれでもかというほどに豊富な魚介類が乗った丼物で、言うまでもなく新鮮。あら汁も付いて、お値段2600円(程度だったと記憶)はお得。他にも目移りするほど多彩なメニューが揃う。
窓の外はすぐに漁港。
他に、ダンボールで作られたダンボルギーニを飾った店や、
コーヒーショップ、理髪店、居酒屋など多彩な店が軒を並べる。
が、この日は平日とあってかお客はまばら。数軒あったレストランも、おかせいはそこそこお客が入っていたが他の店はほぼゼロだった(ランチタイムを過ぎていたというのもあるだろうけれど)。
正直、女川のような小さな町にしては、不釣合いなくらい立派なショッピングモールで、また、現在入っているテナントも、地元客相手というよりは観光客相手を狙っているのだろうかと思われる店が目に付いた。先のダンボルギーニもそうだし、コーヒー店もコーヒー一杯で400円近かった(コーヒー自体は美味しかったし、洒落たカフェではあった)。大都市ならこういう店も面白がられるだろうけれど、果たして女川で生き残っていけるのかは疑問が残る。
帰路、女川の町と海を見下ろす高台の両側は、無数のダンプカーやショベルカーが土煙を上げながら山を削って整地していた。莫大な費用をかけて住宅を高台に移す計画は着々と進んでいる様子だが、漁業と共に時間をかけて自然と発展してきた小さな街が、住宅地を高台に移しても街として機能していけるのだろうか。もちろん、被災した方にしてみれば、津波の心配のない高台への移転は心の平穏をもたらすのかも知れないけれど。
日本の得意とする、ハコモノ行政に陥ってしまわないことを祈るばかり。
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