アメリカやヨーロッパでは夏の間、時刻を一時間早める夏時間(summer time, アメリカではdaylight saving time)の制度をとっている。今年からアメリカでは夏時間の期間が1ヶ月長くなり、これまで4月の第1日曜日に始まっていたのが3月の第2日曜日からスタートした。夏時間の最大の目的は省エネルギーだという。一般家庭やオフィスでの電力消費は照明やTV、パソコンなどが主で、これらの消費は朝より夜の方が多い。だから1時間早めると朝の電力増加分より夜の減少分の方が大きくなり、結果的に省エネルギーになる。1970年代にアメリカで行った試算だと全国民の消費電力の1%を削減できるとか。ただし、この計算は年間同じ生活をした場合の比較である。夕方以降も明るい時間が長ければ、学校や仕事から帰った後に出かける人が実際には多くなる。アメリカの場合だとゴルフ場やショッピングモール、レストランに向かう車のガソリン、目的地での電力消費などが増える。今年も夏時間が始まる直前の新聞やラジオでは、夏時間反対派が「ちっとも省エネルギーに貢献していない」「BBQセットが売れ、ショッピングセンターが喜ぶだけだ」と訴えていた。それでも、個人的には夏時間が好きである。夜7時を過ぎてもまだ明るい。夏至の頃には9時まで明るいので、仕事を少し早く切り上げれば、近所のゴルフ場で1ラウンド回ることもできる。夕方から屋外のプールで泳ぐこともできる。朝暗いうちから行動した分だけ夜の自由な時間をもらったような気分になる。では、日本で夏時間を取り入れないのはなぜかホームページで調べてみたところ、以下の理由が出てきた。-日本を含むアジアの夏は蒸し暑く、夜でも冷房が必要。省エネにならない。-明るい時間に退社するのは気がひける、という人が多く、結果的にサービス残業が増える。-時間に細かい日本人にとって、1時間のずれが体調に悪影響を及ぼす説がある。-未成年者の夜間外出、深夜徘徊等が助長される心配がある。確かに、日本の夏は暗くなってからようやく涼しくなる。お祭りや花火など日没後の楽しみが意外と多く、アメリカに住んでいると恋しくなってしまう夏の風物詩でもある。アメリカの省エネに関しては、夏時間でどうこうするよりも、不必要に大きな車を乗り回すのを辞めるとか、家中暖房をつけっぱなしにしないとか、もっと直接的な削減の余地がある気がする。
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