これもIn the Pipelineで知りましたが、有機合成の実験室での事故の話です。有機合成というのは、その過程で有毒な試薬を使うことも多いし、何しろほとんどのことを有機溶媒の中で行うので、基本的にすべての作業を排気機能がついたフード(fume hood、日本では通称ドラフト)の中で行う。企業のラボだと、一部屋に10台以上設置されていることもざらで、それぞれ他の人が今この瞬間に何を使っているかなんてわからないから、通常は全部オンになっている。理由が何であれ、これが止まったら即刻ガラス扉を下ろして全員実験室から退出する、というのが基本。どこから有毒ガス等が流れ出してくるかわからないからである。これを徹底しないと、このような事故が起きてしまう可能性がある。その日、屋上の工事があって、ラボのドラフトが停止していた。経験豊富な46歳のケミストが停止したドラフト(の前)で作業をしていて、病院に運ばれ、結果的に死亡した。ケミストはトリメチルシリルジアゾメタンという物質を扱っており、これを大量に吸引したことが原因となって死亡した可能性が調査されている。本人が「トリメチルシリルジアゾメタンを吸った」、病院でも「まだ口の中にその味がする」と言っていた。一方、会社ではIn a later interview, LeBlanc also said investigators are also looking into memos from managers at Sepracor that "indicated they wanted procedures restricted while the ventilation system was down."その後の調べで、「換気が停止している間、作業を制限しようとしていた」というマネージャーのメモが見つかっている。LeBlancというのは調査の指揮を執るお役人、Sepracorというのが会社名。上記の試薬が何なのかということよりも、合成の実験室では、多量に吸引すると致死性のモノを扱うことは日常茶飯事なのが現実。詳細はまだ調査中とのことだけれど、ドラフトが止まったら即脱出、あらためてこれを鉄則としましょう。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2009年5月14日(木) 20:17