書籍:「企業再生マネジメント」(★★★)コメント:本書籍は、かなり良書だと思う。オススメです。現在、新規事業の立ち上げを担当しているが、昨今の経済環境の影響もあり、新規事業というよりは企業再生の色合いが強い案件が多くなってきたように思う。私自身、これまでM&A案件やベンチャー投資案件を担当した事はあったが、企業再生案件を担当した事はなかった。M&A案件やベンチャー投資は、基本的に成長戦略であったりシナジー創出であったりとPositiveな要素が多いが、企業再生に関しては、少なからず痛みを伴う外科手術的要素がある訳で、非常に難しいと感じている。また、従来のファイナンス関連の書籍を読んでも、テクニックに関する記載は多いが、一連の流れは掴めず、何処から手を付けて良いのか分からない。これに対して、本書籍では、ケーススタディを充実させ、そのケーススタディも小説的に臨場感溢れる描写になっている事から、疑似体験として学ぶ事が出来て、非常に分かり易い構成になっている。先ずリバイバル・マネージメントの心構えは、シェアホルダー(株主)だけのためではなく、より広いステークホルダーの利益を頭に入れておかなければならないとの事。主な手法は以下の通り。1.危機度の診断と再生可能性の判断1)キャッシュフロー分析2)自己資本比率(50%以上=健全, 30%以上=普通, 25%以下=要注意, 15%以下=危険)3)担保保全指標4)返済期間指標(10年以上=要注意)5)純資産時価評価6)ROIC Tree分析7)事業部門別ROIC Tree分析2.短期キャッシュフローの確保とアセット・リストラによる有利子負債お圧縮1)オペレーティングキャッシュフロー最大化=①価格戦略, ②調達戦略, ③人的リストラ2)メンテナンスキャッシュフローの軽減=ワーキングキャピタルマネージメント3)新キャッシュフローの調達=アセット・リストラクチャリング3.事業ポートフォリオの再構築と機能のアウトソーシング、そしてバリューチェーン・リアラインメント1)事業現在価値ポートフォリオ2)コア事業(=集中投資・合併)、ノンコア事業(=売却・撤退)、半コア事業(=MBO・IPO)4.産業再編によるリバイバル5.私的整理を通じた債務免除と他人資本の受け入れ1)本業で再生できるかどうか、そのための条件は何かを議論する6.法的整理による事業の再生1)民事再生法(削減対象は一般担保債権, 経営者交代なし)2)会社更生法(削減対象は無担保債権・担保付債権・優先債権 経営者交代あり)7.オペレーション・エクセレンシーの定着と組織の安定化1)日常のオペレーションの中で勝ちパターンを確立する2)成功体験と結果責任(特に社員への心理的効果が大きい案件が重要)
企業再生マネジメント(2003/07)安田 隆二商品詳細を見る
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