長ったらしいタイトルですが、実は全部微妙につながっているので、辛抱してお読みください(笑)この週末はけっこうC-SPAN(政治専門チャンネル)でオバマvsクリントンのスピーチを見ていました。3月4日(火)はオハイオとテキサスで予備選が行われるのですが、ここで連敗中のクリントンが挽回できるかどうかが大きな見所になっているのです。(なんだかプロ野球みたいですね。)オハイオ州はNAFTA(北米自由貿易協定)締結以来、製造業がのきなみ海外に流出してしまい、全国平均を上回る失業率に苦しんでいます。そこをオバマはついて、「ヒラリーはクリントン政権以来NAFTAの支持者だったが、自分はNAFTAには反対だ」と主張してきました。それに対し、ヒラリーはNAFTAを単なる「フリートレード」から「フェアトレード」にしなければならない、といい、製造業の海外流出を無視していいと言っているわけではない、と主張しています。オハイオ州でのオバマのスピーチ、それからQ&Aはたいへん興味深いものでした。オバマが10代の母親のもとに生まれ、2歳のときに父に捨てられて苦労して育ち、大学を出てからはコミュニティーワーカーとして、その後は公民権関連の弁護士として働いてきたことを織り交ぜつつ、なぜ自分は今の政治を変えたいのかをわかりやすい言葉で語って聴衆をひきつけます。Q&Aの中では私がここ何回かブログで触れてきた、銃規制や医療制度の問題にも触れ、NRA(全米ライフル協会)や製薬会社のロビー活動が、ワシントンで密室で行われていることを批判し、消費者代表を含む関係者の話し合いは、C-SPANのカメラの元、オープンに行われるべきだ、主張しました。(「関係者がテーブルを囲んで話し合うんだ、ただし私は大統領として一番おおきな椅子に座らせてもらうけどね」なんてジョークを飛ばしていたのがお茶目でした。)もうひとつ印象的だったのは、イランについての質問で「アメリカのイラク侵攻によって、イランをかつてないほど中東で強大にさせてしまった。これは自分がイラク侵攻に2002年当時反対した根拠のひとつだ。」と言うのと同時に、9.11以降、やはり恐怖から完全に逃れられない、という聴衆に対し、数億人のイスラム教徒の内、過激思想を持つものは数万人だと指摘し、この少数者をターゲットにした捜査がきちんと行われるべきで、国民全体に恐怖感を植えつけるべきではなかったと言いました。また、それに関連して、冴えた質問が「あなたは憲法の優位性についてどう思いますか」というもので、これに対し、ブッシュ政権がこれを踏みにじって憲法に反する法令を乱発し、拷問や盗聴を許したことに触れ「安全保障のためなら、大統領の権力が憲法に優越するというのは間違いだ、自分はグアンタナモも閉鎖し、憲法を擁護する大統領になる」とはっきり言明したのはちょっと痛快でした。ところでこの週末ヒラリーがテキサスで放った広告のひとつは、「明け方3時の電話にあなたはどう反応しますか? ヒラリーならあなたと国家の安全を守ります、というわけです。これにはオバマ側も「電話に答えるなら、最初からイラク侵攻に反対した人間が大統領であるべきだ」という広告ですかさず反撃しました。オバマは反ナフタ、反イラクでオハイオでは票を稼いだと思うのですが、テキサスは経済の大部分を軍事関連部門に頼っているので安全保障への関心が高いのです。NAFTAのおかげでメキシコ湾に面した地域では、貿易の増加によって景気も浮揚しています。テキサスでのスピーチではオバマはNAFTA関連への言及は避けているようですが、テキサスではヒスパニックに強いヒラリーが勝つような気もします。いずれにせよ、世論調査は行う機関によって、オバマの勝ちだったりヒラリーの勝ちだったりで、僅差であることはまちがいないようです。冷めた目で見ればオバマも原発の支持者であったり、「アメリカ株式会社」に大きく逆らうことはできっこないのでしょうが、クリントン政権の企業に対する太鼓もちぶりを見たあとでは、やっぱりオバマに対する好感度が私の中でもアップしてしまいます。原状のNAFTAがなぜ批判されるべきか、アメリカ人の立場から言えば製造業の雇用が失わへれる、ということですが、メキシコの人民の立場から言えば、労働者の最低賃金や、環境面などあるべき国内法制に優越する、とされる協定で、まさに国内の一部の金持ちを潤すだけの新自由主義的な押し付けといってよいものだと思います。アメリカ株式会社が世銀とIMFという機関を通して押し付ける、収奪の構造に対抗して、ベネズエラのチャベスとアルゼンチンのキルチネル大統領が中心となって、中南米7カ国の首脳が集まって昨年12月に発表したのが、「南部銀行(Bank of the South、バンコ・デル・スル)」です。アメリカのメディアでは全く取りあげられることはありませんでしたが、これは実は中南米にとってたいへん重要な出来事だったと思います。アメリカではチャベスが悪者扱いされるばかりですが、中南米全体で政治面、経済面双方で着々と「反北米連合」(反新自由主義的独立、と言ってもいいかも)は進んでいるのでした。ところでこの南部銀行に参加する7カ国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、エクアドル、ボリビア、ベネズエラ、ウルグアイ)の顔ぶれを見て、目立つのはなんでしょう。そう、中南米第3の大国、コロンビアがここに参加していないことです。コロンビアは自由党と保守党の2大政党制が敷かれ、事実上それ以外の野党が活動できない、アメリカのミニ版みたいな国です。双方の政党の政治家は、麻薬カルテルとのつながりが絶えることがなく、絶えることのないFARC(コロンビア革命軍)の武装反政府運動に対してはCIAの軍事顧問団が常駐して、軍事キャンペーンが続いています。FARCは隣接するエクアドル、ベネズエラ領内に拠点をおいていることもあり、チャベスもコロンビア人の人質解放交渉の仲介にもたずさわっていました。ところが、先日、コロンビアの国軍が、エクアドル国境を越えて反政府勢力の拠点を攻撃したことに反発し、とうとうエクアドル、ベネズエラ両国は、コロンビアに対して国交断絶を宣言すると同時に両国軍を国境近くに配備しました。(関連ニュース)。チャベスはコロンビアはアメリカの傀儡だ、と主張し続けていますが、同様にコロンビア側はベネズエラがFARCに資金提供をしている、と主張しています。新自由主義というのは、巨大企業のマネーパワーとそれを担保する軍事力の2つのパワーで世界を席巻してきました。9.11以来米軍は中東に戦力を割かなければいけないので、南米はある程度の軍事的な緊張緩和、そして米国からの自由を謳歌してきたわけですが、今回の衝突はひょっとするとまた米軍を巻き込む紛争につながってしまうかもしれません。「新自由主義」のゆくえ、という枠組みで南北アメリカをウォッチしていると、一見つながりのない事柄に関連性が見えてくるのです。そして、「日米軍事同盟」も、(CIAから与野党、メディアへの資金も)やはり日本が資本家にとって都合の良い国であり続けることを担保するための存在である、ということは簡単に類推できることですよね。日本がアメリカの収奪から距離を置こうと思えば、アジアにおけるゆるやかな同盟、そしてアジア通貨構想を無視せざるをえないでしょう。ここらへんは私もまだまだ勉強不足なので、これから学んでいこうと思っている今日この頃なのです。
投稿者: みーぽんのカリフォルニアで社会科 投稿日時: 2008年3月3日(月) 18:28- 参照(253)
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