NPOのJapanese Tehcnology Professionals Association、略してJTPAというのをやっているのだが、去年、JTPAは晴れて正しいNPOとして認められた。設立時にNPOとして認定してもらうのだが、それは5年間のみ有効。5年経ったところで、その実績を持って、本当にNPOとして認められるかどうかの再審査がある。で、この再審査に通ったのであった。で、このNPOの認定、誰がするかというと、IRS、「アメリカ合衆国内国歳入庁」、平たく言うと国税局なんです。NPOにも何種類かあって、税金の免除がないものもある。そういうのは割と簡単なのだが、そうではなく1)NPO自身も税金を払わない2)そのNPOに寄付した人は、その寄付金額が所得控除されるというNPOはIRSの厳しい審査があるのでした。(こういうNPOを501(c)3と呼びます。)よく考えてみると、NPOができて損するのは税金をもらい損ねる税務署。だったら、税務署が審査する、というのは大変合理的でございます。(ちなみに、4−5年前に日本で財団を作った事務局の方に伺った話しでは、日本はNPOは活動内容ごとに別官庁の管轄になっていて、その方の財団は、複数の省にまたがるようなものだったので、認可を受けるのは本当に大変だった・・とのことでした。)さて、で、その「厳しい審査」とはどんなものかと言うと、肝になる審査項目にはこんなのがある。1)寄付する人たち「以外」の利益になる活動をする2)マネジメント自身が不適切な給料をもらったりしない3)大勢から広く募金してもらう各項目を裏返すと、IRSからダメ出しされるNPOとは:1)会員組織のように、会費を払った人がその会費で行う活動でメリットを享受するもの。(それは単なる「税金逃れ互助会」だからダメ)2)寄付と言う形式でお金を集めるが、結局運営者が利益を享受する(それは単なるビジネスだからダメ)ここまでは、ま、わかりやすいですな。ちょっと意外なのが3)の裏返し。これは、元々、大金持ちが相続税を払わず子孫に財産を残すための隠れ蓑としてNPOが使われたことがあり、これを防ぐためにこういうルールができた、、、とこちらの本に書いてありました。大金持ちが自己資産オンリーで財団を作り、子孫は代々その財団で雇って給料を払うことにすれば、相続税なく資産相続ができちゃうわけです。これはいかん、ということで、「大勢から広く資金を集めるのでなければダメ」というルールができたわけ。具体的に言うと、2%ルールと言うのがあって、寄付金額総額の2%を超す金額の寄付は「正しい寄付」ではないとして、別途精査されることになる。つまり50人以上から平たく寄付を募るのが「正しいNPO」なんですね。さらに、「寄付金集めのための予算をきちんと取っているか」とかも見られるのでした。(つまり、「頼まなくても寄付が集まるのは特定の人たちからもらう密約があるからじゃないの?怪しい!」と見られるのですな。)さて、このルールに則って活動していると、結果的に正しいNPOになってしまう、というちょっと驚く成果がある。「アメリカは、みんなミスばかりで何もかもいい加減、それなのに社会がちゃんと回っているところがすごい」というのは、アメリカに住む日本人のほとんどが感じることではないかと思うのですが、表面的には間違いばかりのアメリカが、なぜきちんと回るかと言えば、こういう根元のルールが実はとってもしっかりできているからなんですよね。 <追記>コメントで「日本にも国税が審査し、税金メリットのある認定NPOができた」とのこと。2001年から施行されてるようですね。ちょっと見てみたのですが、日本との一番の違いは、アメリカの場合「宗教法人の認定」も国税が行う、というところにあるかと。「学校法人」も国税が審査。なので、教会もハーバード大学もYMCAもMozilla Foundationも(そしてJTPAも)みんな一律501(c)3となります。それから、日本のように「まずNPO法人として他の省から認可を受け、それから国税の審査」、というのもありません。もちろん、先に法人登録をする必要はあるのですが、この申請の流れは基本的に普通の法人とほとんど変わらず、他の法人と名前がかぶってるとかの実務的支障がなければスルーで登録できます。(すくなくともカリフォルニアの場合)。ということで、アメリカは徹底的に「税金を払わなくて済むかどうかは、いかなる分野の組織であれ、経済的デメリットを受ける主体(=税務署)が審査すべし」という発想なんですね。。。なお、「アメリカが表面的にどれくらいいい加減でミスだらけか」については、過去エントリーのこちら、「いい加減でも世の中は回る」などご覧アレ。「アメリカいい加減エントリー」へのリンク集にもなってます(笑)。<追記終わり>アメリカのNPOの審査内容を詳しく知りたい方はこちらの本など大変詳しく載っております。ま、誰も知りたくないかもしれないが。

投稿者: On Off and Beyond 投稿日時: 2008年2月21日(木) 09:14