この10年ほど、起業を目指す若者が増えたと思う。それはいいこと、というか、ろくな就職先がなかったり、そうでもしないと自分がこれだと思える仕事ができなかったりするという面もあるかもなのでしょう。

起業ってかっこいいし、スタートアップとかベンチャーとかちょっとワクワクするけど、起業のアイデアというのは誰でも思いつけるわけじゃないし、自分にはそんなネタないからムリって思う人も多いだろう。ワタシもそうだし。ファウンダーになったりCEOになるには、自分で技術のシードを開発するか、あるいは人から経営を頼まれるほどの実績がなければならない。

でもスタートアップで働き、そのローラーコースターのようなアップダウンやびりびりするスリルを楽しみ、成功の暁のちょっとしたリターンを期待することは、実はけっこう誰にでも可能だ、ということを書いておきたい。

2004年なのでもう9年前になるけど、「ベンチャーで働くということ」と題してこんな文章を書いている。その一部を引用すると
必ずしもあなたが起業する必要はないのである。新しいアイデアや技術を持って、会社を起業する人はたくさんいる。特にシリコンバレーにはたくさんいて、その理由はよく知られているように、シリコンバレーにはベンチャー企業をサポートし育成する仕組みが確立され、機能しているからだ。自分が特別ではなくても、そうやって次々と生まれる会社に参加することは可能である。いくらファウンダーが天才だとしても、社員となって献身的に働く人々がいなければ事業は成り立たない。当たり前だが天才だけでは何もできないのである。そこに弁護士や会計士、投資家などが集まって形を整え、社員を集めて事業を稼動させて初めて何かが起こるという意味で、一般社員たちだってベンチャー企業の必須アイテムなのである。
さすがに最近は新しいバイオテックのスタートアップが生まれる数はひと頃よりも少なくなっていると思うけどね。それにいろいろ状況も変わってきている。まあそれはさておき、リスキーなスタートアップで働く個人のビジネスモデルはこんなふうに考えることができる。
投資家はお金を投資して事業を育成し、対価に株式を得てキャピタルゲインによるリターンを期待する。個人である私はその会社の実務に必要な能力と労働力を投資する。日々の給料と共にストックオプションも得て、成功の暁にはやはりそれなりに大きなリターンを期待する。ベンチャーキャピタルは日々の給料がない代わりに複数の会社に投資してリスクを分散する。私は複数の会社に労働力を分散できない代わりに、事業の成否に関わらず一定の報酬を得るのである。
ちなみにベンチャーキャピタル(VC)というよりもVCにお金を出す投資家のみなさんという方が正確だ。

日本はどうだか知らないが、シリコンバレーの場合、社員が無給とか極端な低賃金で雇われるとかいうことはまずない。通常は一定レベルの給料が支払われる。そうじゃないとハウジングコストがべらぼうに高いシリコンバレーではそもそも暮らしていけないし。でもそうやって人件費が重荷になるから、オフショアリングが起こるのだし、お金の減り方も早くてタイヘン。

いろいろキビシイのだが、とにかく一般社員の立場だと、スタートアップではリスクが高い早い時期に参加しないとまともなリターンは得にくい。うまくいきそうな(=リスクが低くなった)会社に加わっても、それは(たとえ公開前でも)株価が上がっているので、ストックオプションによる成功時のリターンは小さくなる。このあたりの解説が必要な方はこちらを読んでください。エグゼクティブレベルになるとちょっと話は違うし、まあいずれにせよ最近はハイリスク/ローリターンというケースも多いのだけど。

とにかく一般社員もスタートアップの必須アイテムということが言いたかったのでした。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2013年10月21日(月) 23:05