書籍:「孫子」(★★☆)コメント:経営を論じる際、その国民性を理解する事が大事である。例えば、日本でには、「苦難を全力を持って打ち破る」ことを美徳とする傾向がある。所謂、「武士道」である。この様な文化は、「日本的な経営」の中でも、大きな特徴と言えるのではないだろうか。一方、欧米の経営論は、ポジショニング戦略などに代表される様に、競合他社がいない領域を見つけ出し、最小のコストで最大のリターンを得る事を目的としており、「苦難を全力を持って打ち破る」というマインドは無い。では、成長著しい中国は、どうであろうか?結論としては、中国は、比較的欧米に近いといわれるが、そこには「孫子」の影響が色濃く残っているとの事。そこで、本章を手にしてみた次第。本書は、中国最古の兵書『孫子』13篇の全訳で、原文である漢文と、その読み下し文と、口語訳とを、各段ごとに対象しているので読み易かった。孫子が興味深いのは、兵書でありながら好戦的なものではないということ。・孫子曰く、兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。・百戦百勝は善の善なるものに非ず、戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。・兵は拙速(まずくとも素早くやる)なるを聞くも、未だ巧久(うまく長引く)なるを賭ざるなり。・孫子曰く、凡そ用兵の法は、国を全うするを上と無し、国を破るはこれに次ぐ。一方、兵術に関する記載もあるが、その立場は徹底的な現実主義という点が特徴である。地形、用兵、諜報、財政、人心など記載内容は多岐に渡るが、個人の事情・感情は一切考慮されていない。・兵とは詭道(正常な遣り方に反した仕業)なり。・故に兵を形すの極は、無形に至る。則ち深間も伺うこと能わず、智者も謀ること能わず。・故に善く戦う者は、これを勢に求めて人に責めず、故に能く人を択びて勢に任ぜしむ。・彼れを知りて己れを知れば、勝 乃ち殆うからず。地を知りて天を知れば勝 乃ち全うすべし。・主は怒りを以って師を興こすべからず。将は憤りを以って戦いを致すべからず。利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる。怒りは復た喜ぶべく、憤りは復た悦ぶべきも、亡国は復た存すべからず、死者は復た生くべからず。・夫れ地形は兵の助けなり。敵を料って勝を制し、険夷・遠近を計るは、上将の道なり。此れを知りて戦いを用なる者は必ず勝ち、此れを知らずして戦いを用なる者は必ず敗れる。・国の師に貧なるは、遠師にして遠く輸せばなり。遠師にして遠く輸せば即ち百姓貧し。近師なるときは貴売すればなり。貴売すれば即ち百姓は財竭く。財竭くれば即ち兵役に急にして、力は中原に屈き用は家に虚しく、百姓の費、十に其の七を去る。新訂 孫子 (岩波文庫)(2000/04)金谷 治商品詳細を見る
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