二つ前の「ミリグラムでも油断するな」というエントリーに、下記のようなコメントをいただきましたが、それに関連して何が楽しいかということを。昔合成の先生が、溶媒やそいういった合成化合物の危険なものに囲まれているリスクを勘案しても、合成は面白くてやめられんと雑誌でおっしゃっていたのを思い出しました。楽しくてたまりません?今の仕事が楽しいか楽しくないかと聞かれれば、まあ楽しいかなと思います。「楽しくてたまらないか」といえば、ちょっとそこまでは言い切れないかも・・・。ただこのときに何が一番楽しいかというと、実は合成化学そのものではないのです(いや決してきらいなわけではありません、合成化学の先生方すみません 汗)。○○というリスクがあってもなお楽しいというのは、逆にその○○があるからこそ楽しい、という場合もありますよね?例えば遊園地の絶叫マシンとか、怪談や肝試しとか。上記コメント中の先生の楽しさがこれに当たるかどうかはわかりませんが、私が現在の仕事に感じている楽しさのかなりの部分は、どちらかというと絶叫マシンや肝試し系に近いような気がしています。つまりかなり大きなリスクそのものを楽しんでしまえという感じでしょうか。そして私が最も楽しんでいるリスクは、ラボの危険な試薬や合成サンプルの毒性といったものではないということです。このことは以前にも書いたと思いますが、スタートアップというのはまさにローラーコースター。あるデータによって会社のムードや価値が急降下したり急上昇したりします。多少は平坦なときもありますが、研究開発方針などは突然大きな方向転換をしたりもします。また私は実際に見てるわけではありませんが、銀行口座の残高も上がったり下がったりで似たようなものだと思います。1年後には、雇用どころか会社が存在している保証さえ常にない。ドキドキ、ビリビリしますよね?このドキドキ感、あるいはビリビリ感を一番感じられるのはもちろん経営陣、中でも特にCEOとCFOかなと思いますが、スタートアップだと誰からでも会社全体が見えますから、一般社員レベルでもかなり感じることができます。それがなんで楽しいのかというと、リスクが大きい分、いろいろなことがうまくいったときのリターンもそれなりに大きいということで、要するにギャンブルのスリルや興奮と基本的には同じようなものです。ただギャンブルと違うところは、自分たちの成功が同時に医療やサイエンス、つまり社会への貢献となることと、それに伴う満足感や達成感、そして金銭的なもの以外に知的な興奮もあったりするところでしょうか。また新薬開発のベンチャーの場合、半年以内にでも失敗して終わってしまう可能性がある反面、最終的に成功する場合には、かなり長い年数がかかります。ですから遠い先の成功を夢見つつ、現実のローラーコースター的日常を楽しむというわけです。同じ会社の他の人たちがみんな同じように思っているかどうかはわかりませんが、基本的にそういうスタンスの人は多いんじゃないかな。
投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2010年6月5日(土) 21:13- 参照(173)
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