映画:「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」(★★☆)コメント:2001年に破綻した企業「エンロン」の巨額の不正経理・不正取引を題材にした作品。エンロンは、総合エネルギー取引とITビジネスを手掛けていた全米有数の大企業であったが、その破綻は、大手会計事務所も巻き込んだ一大スキャンダルとなった。2006年、在米国投資会社に勤務していた時に友人が紹介してくれた作品で、アカデミー賞ドキュメンタリー部門にもノミネートされている。今般、財務会計を学んでいくにあたり、米国会計基準に大きな影響を与えた事件だったことを再認識したため鑑賞してみた次第。日本のライブドア事件同様、会計処理を巧みに操った事件だけに、内容は若干難しいが、元社員の証言、内部資料として残されたビデオ映像や音声テープ等が臨場感溢れる内容に仕上げている。実際に、ケン・レイ(元会長)、ジェフ・スキリング(元CEO)、アンディ・ファストウ元CFOが登場するのも凄い。エンロンの問題自体に対する評論は、その切り口によって変わると思う。個人的には、市場バイアスの存在が、非常に興味深かった。結果だけを見て、「拝金主義」「倫理感の欠如」と批評することは簡単であるが、誰も最初から破滅/不正を目指していた訳ではないだろう。誰もが「新たな価値創造」に期待し、その期待が熱狂となり上昇気流を生み出した。しかし、何らかの力により、何時からか、徐々に破滅に向かい始める。サブプライム問題にしても、根本的な問題は同じだ。銀行は金利、株主は株価、経営者は収益、従業員は給料を追求する限り、いつかは誰かが損をする仕組みになっている。可哀想だけど、弱者と定義される人達でさえ、その仕組みにBetしたのなら責任があると考えている。エンロンは、「Ask why」という標語を掲げていた。(トヨタと似ている)まさにその通りだと思うが、それでも破滅した。映画の中では、「船長が船長でなくなる日」という表現が使われていたが、企業には様々な慣性の力が働いているから、直ぐには転舵出来ないのが現実なのだと思う。そう言えば、私が、まだ米国に居た頃、同僚が不動産部隊の人間に「雑誌などで、土地価格の暴落が懸念されているが大丈夫なのか?」と質問していた。日本で、その問題が一般的に議論されるより、大分早かったと思う。しかし、不動産部隊の人間は、「トレンドとしては記事の通りだと思うが、我々の戦略は×××で、それとは異なるから大丈夫だ」と答えていた。その時は、漠然と「そんなものか」と思った事を記憶しているが、その後暫くして大打撃を食らった。しかし、残念ながら時間を巻き戻せたとしても、結果は同じだったと思う。一方、将来に目を向けてみると、現在の環境関連分野は同じ様な印象を受ける。例えば、当初Smart Gridの話を聞いた時は、カリフォルニア州の様に、電力自由化によるインフラの脆弱性を要因とした停電を避ける事を目的としていたと思う。しかし、本映画の通り、その停電が人為的な要因が含まれているとするならば、前提条件が大きく異なる。確かに、電気自動車の監視等に利用する事も、その目的としては理解出来るが、目的が捻じ曲げられて来ているのではないかと疑念を抱く。決して否定をしている訳では無く、Smart Gridは本当に必要なのか、改めて問い直してみるのも価値があるのではないだろうか。最後に、映画の中で触れられていた教訓を以下に記しておく。人生を振り返り「失敗した」と認めるのは苦しいでも、自分を冷静に見つめ自問しなくては本当の自分は?今の自分は?もしかして幻影を追っていたのかもしれないエンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか? デラックス版 [DVD](2007/05/25)元エンロン社員:ケン・レイ(元CEO) ジェフ・スキリング(元CEO) アンディ・ファストウ(元CFO)商品詳細を見る
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