木曜日の夜は久々にサンフランシスコ交響楽団の演奏会へ。この日の演目は、グスタフ・マーラーの交響曲第5番。この交響曲の第4楽章、アダージェットは世の中で最も美しい曲として必ずあげられる曲。僕もこの曲の持つ黄昏感、退廃的な美しさ、滅びの美学みたいなものには強く惹かれるものがあります。サンフランシスコ交響楽団の常任指揮者、マイケル・ティルソン・トーマスが最も得意とするのがマーラーの作品。以前にも一度聴いていますが、今回もこれは逃せない演奏会という訳で足を運びました。今回は、ちょっと趣向を変えて、一番安い席を確保。この席、たったの$15。場所はと言えば、ステージの真後ろ、センターテラスと呼ばれる席。音響的にはベストではないけれど、それでも十分に良い席です。更に、演奏者の仕草や指揮者の表情が良く見られるので視覚的にとても面白い席だといえます。この席の醍醐味はやはり自分が演奏者になっているかのような気分になれることでしょう。この迫力と臨場感は正面の客席では味わえないものがあります。金管が吠え、パーカッションが大地を揺るがす大音量を出すと、電気が走ったかのように背筋がゾクゾクと震えます。久しぶりにこんな感動を味わいました。弦楽器の掛け合いもステレオで聴こえるし、これから毎回センターテラスで聴いてみても良いくらい。曲目がマーラーというダイナミックな曲だったのも幸いでした。
1楽章から3楽章までは非常に良い演奏で、食い入るように演奏にのめりこみました。が、期待していた4楽章はイマイチ。決して悪い演奏じゃないのだけれど、演奏者に近い分だけ、演奏者が出す譜めくりの音や、弦楽器の耳障りな、摩擦音なども聴こえてしまうのです。曲も難しいから仕方ないのでしょうが、演奏のズレや、演奏者がお互いに手探り状況になってしまうような箇所もいくつかありました。きっと正面ステージで聞いたら、各々の楽器が持つ音域だけが増幅されて聴こえるので、こういう雑音は聴こえなくなるんでしょうが。思い入れの強い曲だけに、期待値もあがり、それが失望に変わってしまったとでもいいましょうか。それでも十分に良い演奏だったと思うのですが(そう信じたい)。でも、4楽章がイマイチに思えた一番の原因は…後ろのおっさん、鼻かむな~よりによって、何故一番静かな4楽章で鼻をかむのだ!!信じられん。5楽章は、正直、指揮者が手を抜いているのか?と思えるフシが幾つかあって、ちょっとびっくりでした。「あれ、指揮止めちゃったの?」と思ったところもあったりして。センターテラス席、超お勧めです。ちなみに、このセクションは自由席なので、前の方に座りたければ早めに行くことをお勧めします。
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