毎度おなじみ、C&EN11月24日号の記事(アクセスは会員のみ)からですが、以前にもちょっと触れたとおり、アセトニトリルという有機溶媒が枯渇しかけているという話です。 アセトニトリルはアクリロニトリルを生産するときの副生成物として得られます。アクリロニトリルはアクリル繊維や各種ポリマーの材料になります。アクリロニトリルプラントが100リットルのアクリロニトリルを生産するときに、2から4リットルのアセトニトリルが得られるそうです。にわかには信じがたい話ですが、米国では何と、Ineosというたった1社がテキサスのとオハイオの工場でアセトニトリルを生産しているのだとか。昨今の世界経済の減速で、アクリロニトリルの需要が減少しているため、そのマイナーな副生成物でしかないアセトニトリルもあおりを食らう形で生産量が落ちているのだとか。さらにこの1年間には他の要因も重なったと。テキサスのプラントはハリケーンアイクに備えるため9月にシャットダウンし、オハイオのプラントは夏の間落雷のために何度かダウンしたとか。さらに来年、テキサスのプラント設備増強のためにもっとダウンタイムが増える予想だとか。化学試薬大手のシグマ-アルドリッチの予想では、この不足は来年半ばまで続くだろうとのこと。今すぐパニックという状況ではありませんが、若干入荷しにくくなっているのは確か。うちの会社はスタートアップで小さいので、使用量は大きな会社から見たら誤差範囲。こういう小口のカスタマーは当然優先度も低いわけで、供給が足りなくなってきたときに真っ先に影響を受けやすい恐れがあるわけですが、vendorの担当sales repは一応こまめに気を使ってくれていて、幸い今のところ問題にはなっていません。我々にとってのアセトニトリルの主な用途はHPLCの移動相。メタノールやテトラヒドロフランでも代替は不可能ではありませんが、業界の長年の経験的にアセトニトリル系が最も分離能がよい場合が多いので、もしなくなるとけっこう困ります。分析屋さんにとってはそれこそとんかつ屋さんにとってのパン粉みたいなもの。他の用途としては、C4炭化水素の混合物からブタジエンを抽出するのにも使われているそうです。供給が安定するといいのですが、それにしても作っているのが全米でまさか1社とは・・・。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2008年12月6日(土) 13:14