本を読んでばかりいる。 「孔子」にとりかかる直前、著者最晩年の日常を綴ったもの。食道がん手術後、無意識のうちに何度も発していた言葉は家族によれば、 地獄はあの世にはない。若しあるとすれば、この世にある。 だったと言う。 それから三年という歳月が流れている現在でも、その断定は、私の心の中の静かな安定の座を占めている、と言うことができる。"地獄"は来世にはなくて、いま生きている、この現世にあるのである。 そして隠遁について。 隠遁しようと思っても隠遁したりすることはできない。若しそういう隠遁者があったら、それは隠遁者とは言えないだろう。隠遁とは、自分が気付いてみたら、いつか、みごとに、世間というものと交渉を断っていた。或いは断たれていた。―それでいて、それが、さして淋しくも感じないし、気にもならない。これが隠遁というものなのだろう。 井上作品は、「異国の星」「本覚坊遺文」「孔子」を繰り返し読む。中でも本覚坊の「隠遁生活」が心にしみる。 異国の星〈下〉 異国の星〈下〉

  • 作者: 井上靖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1987/10
  • メディア: 文庫

井上靖全集〈第22巻〉 井上靖全集〈第22巻〉

  • 作者: 井上靖
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/02
  • メディア: 単行本

孔子 孔子

  • 作者: 井上靖
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1995/11
  • メディア: 文庫
投稿者: My Life Between... 投稿日時: 2007年7月1日(日) 22:00