一昨日(11月9日)は11月の第二金曜日ということで、JTPAの恒例行事のギークサロンが行われた。いつもはプログラミングの話になるのだが、今回はバイオ分野のスピーカーによるStem Cellの話になった。

清田純氏とStem Cellについて語る

上のJTPAのページにもあるが、清田さんは医学者。Stanford大学のInstitute for Stem Cell Biology and Regenerative Medicineの博士研究員という方。しかしプログラミングも好きで、JTPAのギークサロンにもよく顔を出している。今回はバイオの話ということで、JBC(シリコンバレーのバイオ関係の団体)にも声をかけ、JBC経由で話を聞きに来た人もたくさんいた。バイオは正直言って門外漢なので、ちゃんと話についていけるかどうか自信は無かった。しかし清田氏もJTPAの人たちがバイオ分野に疎いことは知っている。基本的なことから説明してくれた。

幹細胞(Stem Cell)はヒトの細胞の「大元」になる細胞。ヒトの体の血液、皮膚、神経を作る細胞は、機能細胞と言われるもので、これは前駆細胞から作られる。その前駆細胞の元になるのが幹細胞。肝細胞は前駆細胞→機能細胞と変化する多分化能と自分のコピーを作る自己複製能がある。

幹細胞の機能を利用して、骨髄移植、癌の治療が研究されている。またES細胞(Embryonic Stem Cell)は細胞を培養して、卵子に戻すことができる。ここからクローンという技術が生まれる。クローンによって個人のDNAの再生はできるが、エピジェネティックス(詳細は省略)がランダムに起きるため、DNAが同じでも完全に姿形が同じ人間(動物)は生まれないということだった。

ヒトES細胞は失われた臓器や機能を再生させる「再生医療のソース」になるというのが1つ。もう一つは「人間の病気の原因を研究するためのツール」になっているのだという。

最後にCIRM (California Institute for Regeneration Medicine)。これはカリフォルニアが州債を発行して、再生医療の研究を行うという壮大なプロジェクト。アメリカでは原理主義的なキリスト教の影響が強い。特にBushという大統領はその影響が強い。Bushが大統領になったおかげで、アメリカ連邦政府が出資する機関での再生医療の研究はできなくなった。ところが、2004年にカリフォルニア州知事に当選したSchwartzneggerは、債券を発行して連邦政府の援助を受けない研究を始める。同じ共和党の大統領とカリフォルニア州知事だが、これだけ意見が違って、しかもそれを実行してしまうところがすごい。

かくしてカリフォルニアにはバイオ関係のベンチャービジネスが数多く生まれた。特にシリコンバレーはGenentecというバイオベンチャーの草分けになった会社(今や大企業)があり、その本社があるSouth San Franciscoは「城下町」のようにバイオ関係の会社が作られている。バイオはITと並んでシリコンバレーの原動力になっているのである。

投稿者: Silicon Valley ... 投稿日時: 2007年11月11日(日) 03:36