以前に書いたエントリ、物理クイズ(光の反射)。良く考えれば考えるほど分からなくなってしまうのだが、光の専門家の中村君とやりとりしたメールの一部を以下に引用する。僕の質問。ページに写真があるのですが、2重窓に映った腕時計の2つの像の色が違って見えると言う面白い現象です。2重窓の手前のガラスで反射した像は色の変化が無く(シルバー)、手前のガラスを通過して奥のガラスで反射した像は赤く見えています。「波長の短い成分は手前のガラスで反射するか手前のガラスを通過するときに散乱してしまう」と思うのですが、どういう条件でそうなるのか、なんとも説明がつきません。貰った回答。ガラス中のレイリー散乱じゃないかな。レイリー散乱の散乱係数は波長の4乗に反比例。青色と赤色では散乱の度合いが数倍違うということに。青色の散乱>赤色の散乱しかし、散乱強度は散乱係数×長さで決まるので、ガラス程度の厚さで散乱の波長依存性がここまではっきり見えるというのはちょっとびっくり。ガラスの純度が低いからかな。アメリカの家だから?更に僕の返事。自分はレイリー散乱以外思いつけないけど、懐疑的。確かに、ガラス2枚程度でそんなに違うとは考えにくいんだよなあ。結構ガラスが汚れていた(笑)ので埃が短波長成分をブロック、なんてことも考えてみたけど、それでは両方の像が赤くなるはずだし。室内にある時計の像が直射日光を浴びているところがガラスに反射しているので、「ガラス2枚分通過+反射1回した光」と「4枚分通過した光+反射1回」の比較になるんだよね。レイリー散乱だけで説明するのならばガラス2枚分が致命的な違いになる、と。うーん。もう1つアイディアを貰う。この現象、時計の反射像を見る角度に対する依存性はどうなのかな。角度依存性があれば、屈折率の波長依存性によるブリュースター角の違いってのもあるかもしれないけど。でも否定。あ、自分の良く知らない言葉が出てきた。 でも、依存性は気づかない範囲だったなあ。上から下から見たり、写真撮るために時計の位置や向きを変えたり、カメラの向きも変えたりしてたけど、かなり広い範囲の角度から見ても、色の違いは視認できた。2枚のガラス間のギャップは 2, 3cm 程度だから、2つの像の反射角はそんなに違わないはずだと考えると、それで説明するにはピンポイントな依存性が求められるってことだよね? ちょっと厳しいかも。というわけで、更なる意見、推測、「これ試してみろよ」など、物理畑の人からのフィードバック募集中。よろしくお願いします。レイリー散乱は、「空が青いのはなぜ?」「夕焼けが赤いのはなぜ?」の理由として出てくる。「ルーシー、なぜ空は青いの?」「みどりじゃないからよ!」という有名な話もあるが、それはまた別のお話。

投稿者: admin 投稿日時: 2007年5月19日(土) 23:57