コワイタイトルをつけてしまいましたが、ちょっと前のChemical & Engineering News(8月20日号)に、「Pharma's Mixed Bag」という記事があって、今年の上半期のbig pharmaの業績サマリーが載っている(アクセスはアメリカ化学会員のみ)ので、まずはその内容の一部をご紹介。それによると今年の1Q(first quartar)、2Qとも、売上げトップはJ&Jで、合計約$30B、2位がPfizerで、合計約$24Bとなっている。いつの間にかナンバー1はJ&Jになっていたのですね。続くのがGSK($23B)、Novartis($20B)、Safoni-Aventis($19B)といった欧州勢。ちょっと間があいて、Abbott($12.3B)、Merck($11.9B)となっている。ただしerningsはPfizerの$7.7B(利益率33%)に対し、J&Jは$6.5B(21%)。利益ではまだPfizerが1位のようだ。売上げの昨年同時期からの変化という点では、Pfizerはわずか0.3%の伸び。J&J、Roche、Abbott、Schering-Ploughなどが15%前後の伸びを示している。一時期Vioxxで苦戦したMerckも、DPP-IV阻害剤のJanuviaなどの好調な伸びで、6.3%の増加。Pfizerが苦しんでいる最大の原因は、莫大な売上げを誇ってきたlipitor(リピトール)が急激に売上げを落としていること。Merckのzocor(ゾコール)とBMSのpravachol(プラバコール)という二つのスタチン(コレステロール低下剤)のジェネリックが特にUS市場で急速に浸透してきているため。その上降圧剤のnorvasc(アムロジピン)と抗不安薬のzoloftも特許切れのため、それぞれ45%と82%という大幅ダウンだそう。Lipitorも含めて、落ちることは当然わかっていたがよもやここまで落ちるとは、という感じらしく、アナリストによれば短期での持ち直しは難しそうとのこと。GSKも大型糖尿病薬のavendir(rosiglitazone)に心臓発作リスクが浮上し、大幅な売上げダウン。もうひとつの記事で、biopharmaについても眺めているが、最近ちょっと苦しそうなのがAmgen。こちらではるさんも触れているとおり、稼ぎ頭のエリスロポエチン系薬剤の安全性に疑問符がついたためで、その結果2千数百名のジョブカットが行われるとのこと。株式時価総額でも、先週末で$55B。Genentechの$83Bに水をあけられている。私はアナリストでもなんでもありませんが、こういった記事から感じられるのは、どんな業界もみんな厳しいのでしょうが、製薬業界も例外ではないなという当たり前のことですね。特許切れによる売上げ減少はある程度予測できるものですが、確率の低い副作用、安全性の問題というのは製品の売上げが増えるほど、つまり処方数が増えれば増えるほど統計的に有意でなかったものが有意になる可能性が増すわけで、ブロックバスターになればなるほど、どかーんと落ちる可能性も増えるいう、恐怖の構造があるわけです。最優先されるのは患者さんの安全である一方、薬は常にリスクとともにあり、製薬会社という営利企業が研究、開発、製造、販売する以上、よりよい次世代新薬の開発のためにも売上げと利益を最大化するよう努力しなければならないところから、この構造が生じます。それでも十分大きな売上げと利益出してるじゃん!と言われそうですが、常に上記の恐怖と責任(訴訟リスクも)がついてまわることや、またそういったお金の一部が、社員ひとりひとりの雇用そのものという大きなリスクを取りつつ新薬開発に励むバイオベンチャーへの投資や共同研究や買収などにも使われたりしていることなどを考慮すれば、もちろん問題はたくさんあるとは思いますが、ほんの少しくらいの理解はしてあげてもいいかも知れません。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2007年9月9日(日) 16:53