その日の朝はいつものように忙しかった。かみさんが、子供たちを起こして、身支度を整え、朝飯を食べさせている間に、僕はぴろ子のランチを作る。子供たちが朝食を終えたら、かみさんはぴろ子を小学校へ連れて行き、僕はぴろ太郎をデイケアに連れていく。一息つく間もなく朝は終わる。
昼過ぎから、ぽつぽつとフェイスブックに誕生日おめでとうのメッセージが届きだす。そう、この日は僕の誕生日なのだ。正直、誕生日が嬉しかったのはとうの昔の話。それでも、普段交流のないもののフェイスブックでかろうじてソーシャルネットワークフレンズとして繋がっている友人から年に一度でもこうやってメッセージが届くのは、ありがたいし、悪くないなと思う。
夕方は朝同様に慌ただしい。
その日、かみさんはぴろ子をアフタースクールから拾って、バレエクラスに連れていく。僕はぴろ太郎をデイケアから拾って自宅へ戻る。一歳児のぴろ太郎はかまってちゃんなので、かみさんか僕のどちらかがぴろ太郎と遊んでいる間に、どちらかが急いで夕飯の支度をする。ほどなくして、かみさんはぴろ子を迎えにバレエクラスに行き、僕はぴろ太郎に夕飯を与える。
更に、ぴろ子が来月、学校で行われるタレントショーに友人らと出ることに決めたため、その練習が頻繁に入るようになった。この日はぴろ子の友達らがウチに集まって練習するのだそう。バレエクラスが6:30pmに終わり、タレントショーの練習開始が7:00pm開始。その30分の間にぴろ子はバレエクラスからウチへ移動し、着替えて、夕飯を流し込む。
当然、ぴろ子の友人がウチに集まるとなれば親御さんも一緒なので、多少なりとも家を片付けなくてはならない。幸い(なのか?)、この日は練習がドタキャンになったので、多少ゆとりができた。とは言え、ぴろ子は学校の宿題もあれば、ピアノの練習も少しはしなくてはならない。また、ぴろ子は自分の好きなYouTubeのチャンネルも見たい。宿題、ピアノ、YouTubeのどれをするかで葛藤があり、そうこうしている間にお風呂の時間になり、そして就寝時間になる。
かみさんはぴろ太郎を連れてセカンドベッドルームへ。僕とぴろ子は、マスターベッドルームで横になって本を読み聞かせる。
疲れ切ったぴろ子は、短い物語が終わらないうちに眠りについた。
僕は話途中ながら本を閉じ、天井を眺める。繰り返される慌ただしい毎日。この日も例外ではなかったな。
壁に貼られたカレンダーには、 「ダディのバースデー」とマークされていたが、今日、朝から今まで、かみさんもぴろ子も僕の誕生日のことに触れてはいない。昨年までは、毎年祝ってもらっていたが、家族が、忙殺のあまり僕の誕生日のことを忘れて一日が過ぎ去る日が来たのだろうか。ある意味記念すべき日かも知れないな、なんてことを思いながらぴろ子を起こさないようにそっとベッドから起きる。
僕は階下へ降りていき、ダイニングテーブルに座ってラップトップを立ち上げ、仕事をする。あと15分で今日が終わる。このまま本当に誰も僕の誕生日に触れずに一日が終わるのかな…、なんてことを考えていたら、かみさんが起きてきた。何も言わずに、僕の向かいの席に座り、ラップトップを立ち上げた。どうやら仕事をしだしたようだ。
11:55pm。あと5分で今日が終わる。
と、唐突にかみさんが顔をあげて、
明日の誕生日、何か食べたいものある?
と聞いてきた。おいおい、何を言っているのだ
あと5分で僕の誕生日は終わるのに… ということを伝えたら、
あなたの誕生日は明日でしょ!
えっ、ラップトップのカレンダーを確認したら、確かに僕の誕生日は明日だ!
ああ、自分の誕生日が今日だと勘違いしていたよ。そういや、Facebookのメッセージをくれたのは日本在住の人たちばかりだ…。
orz
という訳で、その翌日はかみさんお手製のバースデーケーキで誕生日を祝っていただきました。
ちゃんちゃん。
- 参照(188)
- オリジナルを読む