7月13日にがんで亡くなった劉暁波(りゅう ぎょうは)の陳述「私に敵はいない」の日本語翻訳に目を通す。
投獄されてもなお自らの信念を貫きとおすその姿勢に、体の奥底が熱くなる。後半、妻に対する愛の言葉は涙なしには読めなかった。
劉暁波はその陳述で、彼に接した警察、検察、裁判官、看守は彼に敬意を払い、非人道的な行動はなかったと記している。もし、これが本当なら、国家体制を運営維持する側の人々も、共産党一党独裁体制の異常さを知りつつ仕方なく職務をこなしている…とは深読みしすぎだろうか。
劉暁波が亡くなる少し前の7月1日、北京大学卒業式で行われた張維迎教授の講演がSNSにアップされたが、当局によりすぐに削除されたのだそう。この講演内容もとても興味深い内容なので、是非ご一読あれ。その内容は、端的に言うと、自由のない現代中国では技術革新は起こらないという内容で、劉暁波が求めた自由の必要性を経済学の視点から説いている。
ところで、金持ちになった中国の人々が次に求めるのは民主化だろうから、中国共産党が行った経済開放政策は成功したものの、結果として、自分たちのクビを締めることになるのでは…と思っていたところ、実は、金持ち中国人たちは共産党と持ちつ持たれつの関係があるので、そう簡単に民主化は進まないだろうとの記事を読んだ。僕が読んだ元記事は日経BPか何かの記事だったがURLを失念。でも、同じような内容はインターネット上でいくつも見つけられる。
曰く、中国で金持ちになったのは、都市部に住む4億人で、農村部の9億人は取り残されたまま。都市部の4億人が、農村部の出身者を安く雇用することで経済発展した。金持ちになった都市部4億人は、民主化なんてしたら自分たちの経済発展も望めなくなるので、民主化には消極的という内容であった。
なるほど、と思う一方、結構衝撃的な内容でもあった。自分の周りにいる優秀な大陸出身の中国人エンジニアたちは、中国共産党の一党支配を憂い民主化を望んでいると信じていたのだが、実はそうでもないのかも!?
とはいえ、中国の労働力も高騰してしまった現在、今までのような高度な経済成長は望めそうもない。先の張維迎教授の話にもあるように、民主化してイノベーションを引き起こすことで経済成長するのが一つのやり方だろうが、中国政府がそんなことを認めるはずもない。
遅かれ早かれ民主化へ向かっていくのは必定。その際、国体護持のため、共産党が安易にできる方法は、外部に敵を作ること。日本をはじめとする周辺諸国が巻き込まれないことを祈るばかり。
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