かみさんの実家からは、日本三景のひとつ、松島がほど近い。松島は、個人的には日本三景の中で一番綺麗じゃなかろうかと思う(天橋立はまだ行ったことがないが、厳島神社よりは松島に軍配をあげたい)。穏やかな松島湾に浮かぶ様々な小島は瀬戸内の風景にも似ているが、砂岩で出来た島々は波風によってユニークな形に侵食され、更にその島々の上には、松の木々が独特の姿を見せる。また色彩的にも、海の青さ、砂岩の島々の白い輝き、松の深い緑と、色鮮やかだ。

かみさんとの結婚式の披露宴会場やその晩の宿は松島湾が眺められる場所にしたし、JRでかみさんの実家に向かう際に見える車窓からの松島湾の眺めもまた格別で、いつも楽しみにしている。もちろん、松島湾の観光船にも乗ったことがある。

そんな松島湾だが、僕がかみさんと結婚した2008年当時、かみさんの叔父が「松島湾内よりも奥松島の方が一段と美しい」と言っていた。

一般的に松島というと、松島湾の湾内にある島々を指す。奥松島とはその湾を包み込む東側の半島の外側、外洋に面した一角のことで、松島湾の女性的な美しさとは対照的に荒波に揉まれた男性的な美しさがあるらしい。この一角は嵯峨渓(さがけい)という名称でも呼ばれているようで、その話を聞いてから、一度足を運んでみたいと思っていた。

一度、奥松島をめぐる遊覧船に乗ってみようと、その乗り場にほど近い、JR野蒜駅に降り立ってみたことがあるが、このときは遊覧船シーズンが終了してしまっていたことを駅で知り、すごすごと引き返した。

その数年後、東日本大震災が発生して、太平洋に近い野蒜駅や外洋に面している嵯峨渓一帯は津波に飲み込まれててしまい観光どころではなくなってしまった。

さて、今回。震災から5年が過ぎ、嵯峨渓めぐりの遊覧船も復活したと聞くので、かみさんの実家滞在中に時間をみつけて、足を運んでみた。

今回利用したのは奥松島公社による嵯峨渓めぐりの遊覧船。遊覧船は、JR野蒜駅から数キロ離れた大高森観光ホテルのとなりから出発する。大人2000円の一時間コース。

で、遊覧船乗り場に足を運んでみて分かったのだが、この周辺は何もないすごく寂しいところ。大高森観光ホテルも名前負けしている裏寂れた建物(現在、建て直し中)で、遊覧船のチケット売り場がぽつんと建っているだけ。うーん、行く前は、みやげ物屋やレストランがずらりと並んでいるのだろうと思って現地で食事しようと思っていたが、そういう施設は全くなかった。

更に、遊覧船はお客が集まり次第出発するのだろう。そして、最低遂行人数は大人3名。
実は今回、遊覧船乗り場には二日連続で足を運ぶこととなった。

一度目は、僕とぴろ子の二人で遊覧船に乗るつもりで午後2時頃に行ったのだけれど、お客は自分たち以外にはおらず船は出ないとのこと。3人分の6000円払えば貸切状態で船に乗れるけれど、かみさんの実家からココまで30分ちょいで来れるので、翌日の午前中に出直すことに(チケット売り場の店員さん曰く、午前中の方がこの界隈で宿泊した人が帰りに観光船に乗っていくことが多いのだそう)。このとき、店員さんがかつてのJR野蒜駅(JR野蒜駅は高台に移転したが、かつてのJR野蒜駅は記念館となっている)と、高速道路の矢本PAに、観光船の割引券(10% off)が置いてあることを教えてくれたので、帰りに立ち寄って割引券を入手。

そして、翌日、家を出る前に電話をして、お客が集まっていることを確認する。この時点で集まっているお客は2名で、最少遂行人数までは集まっていない。そこで、一時間以内にそこに行けることを告げると、その店員さんが、そこにいる2名のお客さんに1時間待てるか聞いてくれ、了承してもらった。

こうしてようやく遊覧船に乗れた。結局この日は10名のお客を乗せて出港となった。

船は小型で、お座敷タイプ。靴を脱いで床(カーペット)に座る。

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10名も乗ればほぼ満席(定員は20名程度)。デッキにも出られるけれど、狭いので2~3名程度しか出られない(港から嵯峨渓までは高速で移動するのでデッキには出られない。デッキに出られるのは嵯峨渓について低速移動するときから)。

嵯峨渓は外洋に面しているけれど、それほど船は揺れず。景観は想像以上に素晴らしいものだった。

こんな感じの奇岩がいくつも見られる。

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あしか岩と名づけられた岩
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嵯峨渓は津波の被害を受けて、いくつもの小島が崩壊したそう。

こちらは青の洞窟と呼ばれているところ。実際には写真で見る以上に青く輝いていた。カヤックなら洞窟内部まで入っていけるそう。

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もっと素晴らしい景観が続いたのだが、カメラが貧弱なので綺麗に撮れず。残念。

港に戻ったところで、ぴろ子が階段を見つけ、登ってみる!というので付き合った。実はこの階段、大高森と呼ばれる小高い丘(この半島の最高峰)への登山道で、20分で山頂へつけるというもの。ぴろ子もがんばって山頂まで行き、眼下に松島湾の眺めを楽しんだ。

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津波で流されたかつてのJR野蒜駅のホーム。現在は記念館とファミリーマートが入っている。
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津波がどこまで来たのか分かる。
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かつてのJR野蒜駅からは海が見えるのどかな場所だったが、現在、このあたり一帯はコンクリートの堤防造成工事が進む。浜の向こうに海が広がる景色はコンクリートの壁によって消えてしまった。写真にある横一直線のものがコンクリートの壁(一見すると水平線のようにも見えるけれど、コンクリート壁)

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と、いう訳で、以下、嵯峨渓のまとめです。もし、嵯峨渓に行くことがあれば参考にしてください。

  • 奥松島公社の嵯峨渓遊覧船はお客が集まったら出発するというものなので、現地に行く前に電話して観光船が出るかどうか(お客が集まっているのか)を確認すべし。直接現地に赴いても船が出ないケースもある。
  • その際、既に船が出港しているなら何時頃戻るかを確認。というのも、船は一艘しかなく、周遊には一時間かかるので、次に船が出港する時間がだいたいつかめる
  • 遊覧船は進行方向向かって右手の席がお勧め。右手に観光ポイントが多々あったから。
  • 外洋が荒れている場合、嵯峨渓ではない湾内の別な観光ポイントをめぐるので天気が悪いようならそれも確認
  • 個人的には、6000円払って貸切で乗っても良かったと思える内容でした。今回、一日待って2000円で乗ったけど、貸切にして、すべての景色を独り占めしたかったなーと(次回!)。船が小さいので、一定数のお客が乗ってしまうと自分と反対側の見所が自由に見られない。
  • 観光船乗り場周辺は何もない。チケット売場には小さな待合室と、ドリンクとスナックが販売されている程度。
  • 観光船にはトイレがないので、チケット売場で済ませること
  • 1割引のクーポンが、三陸道の矢本PAと、かつてのJR野蒜駅があった記念館に置かれているとのこと
  • 嵯峨渓観光には別会社による、松島湾から出港する観光船もあることを後日発見(そちらの方が船が大きい)

しかし、松島あたり面白い地形をしてますよね。

福島県境から宮城県沿岸部って基本的に砂浜が広がるなだらかな平野なのに、松島湾だけぽこっと穴があいたような湾になって、小さな島々がいくつもある。松島湾より先(東)は、また砂浜が続くけど、金華山からは突然に複雑な入江が続く三陸海岸になる。このあたり地質学的な違いがあるのでしょうね、よく分かりませんが。

投稿者: Franklin@Filbert 投稿日時: 2017年1月14日(土) 01:26