※長いです!

4月2日(土)
テントから這い出て、簡単な朝飯を済ませ、キャンプ道具を片付ける。準備が出来たところで、昨晩、僕に話しかけてくれたケンとロバートたちに挨拶して、早速コヨーテ・ビュート・サウスへと向かう。

コヨーテ・ビュート・サウスはアルファベットの "P" のような形をしている(PDF版)。
coyoteButtesMap

トレイルヘッドは、南西側のPaw Holeと、北東側のCottonwood Coveの2箇所ある。この両者は直線距離で約3mile程度なのでそれほど大きなエリアではない。

Cottonwood Coveに行くには4WDが必須なので、僕が目指すのはPaw Hole。しかし、このPaw Holeも4WDが必須なため、その2.5mile手前の Lone Tree が僕が今日車で行ける最終地点になる。

キャンプ場からLone Treeまでは5mileの未舗装路。この区間の前半は、89号線からキャンプ場までの区間よりも悪路で、かなり運転に気をつかう。ただ、後半は丘の上を走るためか、轍も減り走りやすかった。後で聞いた話だが、KanabからLone Treeへ向かうのであれば、89号線からHouse Rock Valley Roadを南下するよりも、89A号線からHouse Rock Valley Roadを北上する方が未舗装路を走る距離は短いし、道も走りやすいらしい(が、行かれる前に、ビジターセンター等で道路状況を確認されたし)。

Lone Treeには案内板が出ていて、2WDはここに停めよとしっかり書かれている。
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Lone Treeから歩きだす。地面は砂浜よりもきめが細かいと思われる赤い砂で、足がとられて歩きにくい。あたりは砂漠だが、サボテンやトカゲをちらほらと目にする。ところどころに乾燥に強そうな木もあって、木陰もつくられている。3月末の午前とあって、また風は冷たい。約1時間ほど歩いて、Paw Holeに到着。途中、一台の4WDが僕を追い抜いていったが、ケンやロバートたちではなかった。

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一日20名しか入れないということもあって、あたりには誰もいない。

目の前にはいくつもビュートが立っている。

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縄文文様にも似た装飾が施されたような尖塔が立ち並ぶ姿は、どこか人工的建造物を思わせる。あたりを歩くと、砂に埋もれつつある岩のオブジェがいくつも見つかる。あたかも、かつて繁栄した古代遺跡を歩いているかのような錯覚に陥る。

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さて、ここからは完全にオフトレイル。

案内板もなければ、踏み固められた道もなし。足の向くまま気の向くままに、どこをどう歩いても良い。足元は、砂か、砂岩なため、先人の足跡も見つけにくい。足跡らしきものを見つけても、それが消えかかった人の足跡か、それとも、小動物の足跡か区別も難しい。

昨日のKanabのビジターセンターでパーミッションを貰う際に、二人連れの年配女性がレンジャーに「私たちはGPSを持っていないのだが、コヨーテ・ビュート・サウスを歩く際に、トレイルヘッドの方向を見失ったりするだろうか?」と質問をしていた。

レンジャーは、「コヨーテ・ビュート・サウスの西側には南北に連なる岩山が見えるから、それを頼りにすればトレイルヘッドの方向が分かるだろう」と回答していた。

南北コヨーテ・ビュートの保護区域は、比較的小型な南北に伸びだ山塊にある。その稜線部分がコヨーテ・ビュートの西端の境界線。稜線の西側は切れ落ちた崖になっていて、東側は緩やかな高原状台地が広がっている。

Paw Holeトレイルヘッドはその稜線の南端に位置していて、ここから北に向かって稜線が延びている。が、その稜線部分は高いビュートが聳えていて、とてもそこには登れそうにない。

そのビュートを東側から巻いていけるのか、それとも西側から巻いていけるのか…

足元に先人の踏み跡らしきものが見つけられたので、それに沿って、稜線の西側を北上するように歩き出す。

右手(東側)には、屏風のように連なる高い崖があり、その崖の上にビュートがいくつか見える。レンジャーは「西側に連なる岩山が目印になる」と言っていたことから、あの崖の東側が散策すべき場所なのだろうけれど、どこから稜線の東側に行けるのか分からない。稜線に取り付ける場所を探して北へと進んで行く。

右手に見える岩山が風化、崩れて散り散りになった砂がこの足元のきめ細かい砂なのだろう。足元は、東から西へと下る片斜面。

しばらく歩いたあとで、右手の岩山に取り付けそうな場所を見つけることができた。進んで行くと、えぐられたビュートが出迎えてくれ、稜線に到着。

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稜線の向こう側には、きっとビュートがいくつも林立しているのだろうと思いきや、東側は高原状の大地。稜線付近を北上していったところで、はじめて他のハイカーに出会った。ケンとロバートたちのグループだった。

話を聞いてみると、彼らはPaw Holeから東側に回り込むルートで来たとのこと。ロバートは既にここには3回足を運んでいるそうで、西側、東側の両方から、ここに来れるとのことだった。

ロバートはまだ数日この地に留まって明日もThe Waveの抽選に参加するそうだが、他の3名は今日このあとアルバカーキに帰るとのことで、ここで彼らはキャンプに帰るとのこと。4人はロバートの車で来ているので、ロバートが彼らをキャンプまで送り届けるのだそう。

別れ際に、ロバートは「コヨーテビュートサウスは気に入ったかい?」と聞いていた。正直、もっとビュートが林立しているエリアを期待していただけに、他に見所があるか聞いてみると、もっと北のCotton Cove付近まで行くとまた違った風景が見られると教えてくれた。

そこで、皆に別れの挨拶をしたあと、また一人で北へと向かった進む。視界の開けた高原を北へ向かう。緩やかな登りだが、足元はフラットなので歩きやすい。時折、ブッシュが行く手を遮るが、背の低い植物ばかりなので、見通しは良い。はるか彼方にも崖が見える。

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ほどなくして、視界がぐっと開けたかと思うと、突然に崖があらわれた。目の前には円形に陥没したかのような地形が広がる。その落ち込んだ向こう側にいくつものビュートが見える。

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似たような色なので分かりにくいが下を覗き込むとこんな感じ。決して急な崖じゃないので降りていけそうだが、ところどころで行き止まりになってしまう。
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右手前方に白いビュートがいくつも立ち並ぶのが見える。あそこに行ってみたいがどうやったら到達できるのか。

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降りられそうなところを慎重に降りていく。決して、垂直に切れ落ちた崖ではなく、ゆるやかな斜面なので意外と歩いて降りられる。が、時折、2-3メートル垂直に落下している箇所に出くわすので、いけそうな場所を見つけながら、白いビュートに向かって歩いていく。

そして、なんとか目的としていたビュート群に到着。波打つ大地。
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カラフルなビュート
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2色の岩盤と岩。手前に2色の岩があるが、その岩が乗った岩盤も2色になっている(写真だとその境界が一直線に見えるが、たまたまそう見える位置で写しただけ)。侵食されて、この岩だけが残ったのだろうか。
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この一角をしばし堪能。

写真で見ると、一見、頑丈な岩に見えるけれど、これらは砂が固められた岩で、かなりもろい。歩くと、瓦センベイのようにぱりぱりと割れてしまう。人数制限しているのも納得。

十分に堪能したあとは、帰路につく。ここまで来るのにあっちへ行き、こっちへ行きと試行錯誤を繰り返したが、GPSのトレッキング機能のお陰で帰りは最短コースで帰れた。途中、ロバートたちとあった場所からは、今度は稜線の東側に降りてPaw Holeまで歩いてみる。

Paw Holeに到着。ここからは、Lone Treeまであと1時間ほど歩かなくてはならない。

が、驚いたことに、ここになんとロバートがいた!

「えっ、どうしたの?」と聞いてみると、

日本人ハイカーをLone Treeまで乗せてあげようと思って、もう一度ここに来たんだ

おぉぉぉ~、ロヴァートぉぉ、君はなんて良いヤツなんだ~。もうね、こんな感動したのはじめてかも。

頼りなさそうな日本人単身ハイカーの身を案じてくれたのだろうか…

なにはともあれ、ここは彼の温情に甘えて、Lone Treeまで乗せてもらいました。うれぴ~。

ロバートのお陰で、1時間節約してLone Treeに到着したのが、午後6時頃。ここでロバートとはお別れ。ロバートの連れの3人は既にアルバカーキに向かってしまったのでロバートは今日は一人でキャンプ。であれば、僕も昨晩のキャンプ場にもう一泊しても良かったんだけど、食料を一泊分しか用意しておかなかったので、キャンプするなら買出しに行く必要がある。が、Kanabの街まで買出しに行き、再び、あの見舗装悪路を運転してキャンプ場に行くのはご免こうむりたいところ。

そこで、ロバートにはお礼を言ってここでお別れすることに。

まだ日は高い。そういえば、昨晩、ロバートたちが、「Wire PassからBuckskin Gulchまでの1マイル程度のトレイルもすごく良いよ」とお勧めしていたので、そのトレイルを歩いてからKanabまで行くと伝えたところ、ロバートが詳細な情報を教えてくれた。

地図を見ると、Wire Passからのトレイルは片道1マイルじゃなくて1.7マイルあった。でも、まだ日は高いので明るいうちに往復できるかな~思いつつ、とりあえずWire Passへと向かう。そのトレイルはまた次の記事で。

ちなみに、こちらが僕が歩いたGPSのトレース。グリーンがスタート地点のPaw Hole、右上の赤が白いビュートのあるところ、そして、GPSが止まってしまったのが中央のマーカー。

黄色い領域がコヨーテ・ビュート・サウスのおおよそのエリア。写真2点はその見所。これらの情報は、https://https://www.thewave.info/ から取得。惜しまれるのは、この2箇所の見所のすぐそばまで行っていながら引き返してしまったこと。むむぅ~、あらかじめこの情報を知っていれば足を伸ばしたのに…。これら情報はこのブログを書いているときに見つけたのでした。また次回チャンスがあれば見に行くことにする。

もし、どなたかPaw Holeからコヨーテ・ビュート・サウスを歩こうと思う人がいれば、この地図から僕の歩いたKMLファイル(緯度経度のファイル)をダウンロードできるので、GPSに入れておけばCottonwood Cove方面まではスムースに行けると思う。

もっとも車でCottonwood Coveまで行けるのであれば、それに越したことはないが。

投稿者: Franklin@Filbert 投稿日時: 2016年4月8日(金) 14:39