家族が不在の間に、何か一人でいるときにしか出来ないことをしよう…といろいろ思案した挙句、"The Wave"にチャレンジしてみることに。
The Waveは、バーミリオンクリフ国定公園(Vermilion Cliffs National Monument)の一角にあるエリアで、大地が波うっている地形を見ることができる人気スポット。
※Wikipediaの画像より
このThe Wave、誰でも行ける訳じゃないんです。ココに行くにはパーミッションが必要で、その入手が至難の業。The Waveがあるエリアは、コヨーテ・ビュート・ノース(Coyote Buttes North)と呼ばれるエリアで、コヨーテ・ビュート・ノースに入るためのパーミッションを得られれば、The Waveに行けるのだけど、このパーミッションは一日20人にしか与えられません。
20のウチの半分、10のパーミッションは訪問希望日の4ヶ月前にネットで申し込んでの事前抽選。このネット抽選の当選確率は、ある人(後述しますが、抽選会場で知り合った、The Waveへの抽選を既に8回受けたがまた当たっていないアメリカ人)曰く、1/60とのこと(もちろん日によって変わりますが)。
残り10のパーミッションは、毎日9時に、ユタ州はKanabという街にあるビジターセンターで翌日分の抽選が行われます。こちらに参加するには、The Waveに行きたい日の前日朝9時までにそのビジターセンターに行って、抽選に参加しなくてはなりません。こちらの確率は1/10くらいとのこと。
また、仮に抽選が当たってパーミッションを得たとしても、トレイルヘッド(Wire Passと呼ばれる地点)までの9.4マイルは未舗装路を行かなくてはなりません。このあたり一帯の地盤は細かい砂礫なため、雨が降ればぬかるんで通行できなくなります。また、この未舗装路は雨が降れば川になるところをいくつか横切ります(橋なんてありません)。当然、水が流れていたら川は越えられません。せっかくパーミッションを得ても、天候に恵まれないと行くことはできないのです。
トレイルヘッドのWire PassからThe Waveまでは山歩きです。車で行ってちょいちょいと見られるようなポイントじゃないのです。
やはり、夏休みの時期が人気があるとかで、その頃の抽選にはものすごい数の人がやってくるらしいです。でも、3月末の今の時期なら、それほど人気はないんじゃないか?さらに平日の抽選なら、ぐっと当選確率もあがるんじゃないか…そんなふうに思って、The Waveに行ってみようと思いました。
ざっくりとしたプランはこんな感じです。
3月30日(水)仕事を終えて、夕方ラスベガスに飛び、レンタカーでKanabへ移動。
3月31日(木)午前9時のThe Waveの抽選に臨む。抽選終了後はモーテルに戻って仕事する(この日は休暇取らず)
4月1日(金)有給取得。前日の抽選に当たればThe Waveへ。前日の抽選に外れたら、再度、この日の抽選に参加。その後は適当なところをトレッキング。
4月2日(土)前日の抽選に当たればThe Waveへ。前日の抽選に外れたら、再度、この日の抽選に参加。その後は適当なところをトレッキング。
4月3日(日)前日の抽選に当たればThe Waveへ。この日のうちにラスベガスに戻ってホテルにステイ。
4月4日(月)早朝便でラスベガスからサンフランシスコへ戻り出社する
The Waveの抽選に最大で3回参加できるようにプランニングした5泊6日のプランですが、出費は出来るだけ抑えるべく、有給消化は金曜日の1日のみ、宿代が高騰するであろう週末はキャンプすることにしました(と、言うわけで、この旅行ではテントと寝袋持参)。
3月30日(水)
仕事を終えたあとサンフランシスコ国際空港へ直行。夕方のSouthwest便でラスベガスに飛び、レンタカーを借りて3時間ほど運転して、Kanabに到着。到着時刻、深夜1時半と思いきや、ユタ州はマウンテンタイムゾーンなので、深夜2時半。
前もってExpediaで予約したKanabで一番安いモーテル(Travelodge)にチェックイン。そして、モーテルの部屋から中国とテレカン…。疲れました。
3月31日(木)
朝8時過ぎに起床。ロビーで朝飯をと、部屋から外に出て驚いた。なんと車は結氷していました。ううっ、寒っ!
The Waveの抽選に参加するために、Kanabにあるビジターセンターへ。Travelodgeからは車でほんの数分で簡単に到着。
正直、僕はこの日の抽選はかなり楽観視していました。
だって、3月の、それも木曜日の朝ですよ。だれが、そんな時期にKanabまでやって来れますか。
きっと、10人も集まっておらず、抽選にもならずに、全員にパーミッションが貰えるんじゃないでしょうかねぇ。
ひょっとしたら、今日のパーミッションにまだ空きがあって(すなわち、前日の抽選に10名も集まらなかった場合)、ビジターセンターで今日の分のパーミッションを貰えちゃったりもするんじゃないかな~。そうしたら、今日は有給取得して、明日の金曜日に仕事することにしよう。
そんなことを思いながら、8時45分頃にビジターセンターに到着したのですが、到着してびっくり。
ビジターセンターの駐車場は、かなり広いのにほぼ満杯じゃないですか~。
これって、みんな抽選に来ているのかな…と不安に思いつつ、建物の中に入り、抽選会場の部屋に足を踏み入れます。
なんと、その部屋はかなり広めのミーティングルームで椅子がぎっしりとならべなれていたのに、満席。立っている人も大勢います。
うわぁ~、こんなに参加するんだ…
その集客に驚きつつ、自分も抽選に参加するために申し込み用紙に必要事項を記入して、抽選担当レンジャーにその紙を渡します。
申し込み用紙に記載する事項は、いたって簡単。記載項目は次のようなものでした。
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- 非常時連絡先
- グループでの参加なら、グループ全員の名前
- 自動車の車種とナンバープレート
申し込み用紙をレンジャーに渡すと、レンジャーは僕の番号を教えてくれます。
この番号が僕の番号で、このあと、ビンゴの要領で、多くの番号が振られた玉をケージの中から取り出して当選者が決まります。
ホワイトボードには、天気情報や、現地に行き着くために必要な車のタイプが示されています。
The Waveに向かう未舗装路はHouse Rock Roadという名前。この道を通るには、2WDでもokだけど、車高の高い車(high clearance)が必要と示されています(ホワイトボードの一番左)。選択肢にあるのは、車高の高い2WD、車高の高い4WD、または、行けないのいずれか。
今日の最低気温は摂氏1度だそうで。通りで氷が張っている訳だ。
ほとんどの人は、9時前に申し込み用紙を記載して、抽選開始を待ちます。なので、9時になる数分前は、レンジャーも手持ち無沙汰な様子。多分、毎日披露しているであろう冗談を飛ばします。
「あと数分で9時になるけれど、もし、9時を過ぎたところで抽選希望者が入ってきたらどうする?その人の抽選参加を認める?」
みんな苦笑い。
ちょっといやらしいのは、Kanabから車で1時間東のアリゾナ州ではデイライトセイビングタイムを施行していないため、春から秋にかけて、1時間の時差があるのです。アリゾナ州に宿泊している人が、「今、朝の8時だから、The Waveの抽選に参加するため、今からKanabに行くぞ!」と思っても、もうあとの祭り。ちょうど今抽選が始まってしまっている…という訳です。
レンジャーは続けます。
「この抽選は、当選者がお金を払う、世にも珍しい抽選だ」
抽選に通ると、お金を払ってパーミッションを得るので、そうなります。
「だれか、携帯電話持っている人がいたら、9時になったら教えてくれよ」
レンジャーは高みの見物といった感じでしょうか。
さあ、9時になりました。
まず、レンジャーが、確認のため、抽選応募者の氏名(グループの場合はその代表者)とその人に割り当てた番号をすべて読み上げます。
僕の番号は41。
この日は合計で60弱ものグループが抽選に参加していました。この場に集まったパーミッション取得希望者の総勢は120名程度にもなります。僕の他に、日本人らしき名前が2名ほど読み上げられていました。
ちなみに、複数人で参加の場合は、そのグループの代表者が抽選申し込み用紙にメンバーの名前を記入して、そのグループで1枚だけ応募できます。1グループの人数は6名まで。犬を連れて行くこともできますが、犬もその1人としてカウントされます。1人で複数の応募用紙を提出することはルール違反です。
この抽選の当選者は厳密に10人です(仮に、グループに犬がいた場合でも犬を一人とカウント)。なので、もし、最初に6人のグループが当選し、次に再び6人グループが当選した場合、この2つ目のグループは、
- 6人のウチからパーミッションを得る4人を選出する
- 6人全員が行けないので辞退
のどちらかを選択しなくてはなりません。厳しい選択です。
さて、全員の名前が読み上げられたあと、いよいよ抽選の開始です!
ガラガラガラ… コトン
レンジャーが読み上げます。「最初の当選者は、○番 !!」
会場はため息が漏れます。そんな中、やったーと喜びを上げる当選者の声。
この日の最初の当選者は、4人のグループでした。なので、残りシートは6席。
次の抽選です。
ガラガラ… コトン
この日二組目の当選者は、5人のグループ。既に9人が確定し、早くも残りシートはあと1つ。
ここで、レンジャーが次のような特例を出してくれました。
「残りシートは1つ。ルールでは、あと一人しかThe Waveに行けないのですが、もし、次に2人グループが当選した場合には、1人だけでトレッキングして欲しくはないので、特別にその2人にパーミッションを与えることにします。」
単身での応募者が当たればそれで終わり。
2人グループが当たれば、2人とも行けるのでそれで終わり。
3人以上のグループが当たれば、パーミッションを得られる1人を選ぶか、または、辞退する。辞退した場合には、また抽選が行われるという訳です。
レンジャーが、玉の入ったカゴを回します。
ガラガラガラガラガラ… コトン
「最後の当選者は○番!」
この日の最後の当選者は単身での参加者でした(僕ではありません)。これで、10人が出揃いました。
「当選者はここに残って、はずれた人は速やかに部屋を出てください」とレンジャー。みんなぞろぞろと部屋を出ます。
と、いうわけで、私の初日のThe Wave抽選はハズレでした。
僕も部屋を出て、モーテルに戻って仕事です…
しかし、木曜平日にこんなに人が集まるなんて意外でした。
こんなんじゃ、明日はもっと人が来るんだろうな。
もともとクジ運が悪い方です。当たる気がしません。
どうしよう…。もうThe Waveチャレンジはやめて別なところに行こうかな。ちょっと遠いけど、アーチーズ国立公園とかまだ行ったことないし。
いろいろな考えが頭の中をぐるぐる回ります。
気分はブルーです。
(続く)
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