元日はかみさんの実家の石巻にいたので、一人旅のスタート地点は石巻。が、JRレールパスのバウチャーをパスに交換できるのは仙台駅なため、まずは仙台駅まで移動して、そこでパスを入手してからレールパスの旅がはじまる。という訳でレールパスの旅の始発は仙台だけれど、その前に、思い入れのある仙石線のことを書いておく。

2016年1月2日。石巻発9:03amの仙台行き仙石東北ラインに乗る。運賃840円。所要時間は1時間。

仙石東北ラインは2015年5月30日に営業開始した新しい路線。もともと、石巻から仙台にJRで行くには、仙石線で行くのが一般的だった(他に石巻線というルートもあるが乗り換え多くて時間もかかる)。この仙石線、東日本大震災の際、野蒜という駅周辺が津波で流されてしまった。津波による被害でJRの列車が横転した写真を見た方もいるだろうが、それはこの野蒜駅周辺での津波被害。その後、仙石線は、一部区間をバスによる代行運転で運転再開していたが、2015年5月30日(仙石東北ライン開業と同日)に全線復旧して石巻から仙台まで列車で行けるようになった。

ところで、この仙石線、日本三景のひとつとして有名な松島を通る路線だが、この松島付近で東北本線と仙石線が接近する場所がある。JR東日本は、その両線路を相互乗り入れできるように新たに線路を敷設し、その両者を乗り入れる仙石東北ラインが営業開始した。仙石東北ラインは全線快速なので、石巻から仙台まで1時間程度で行ける様になったのが嬉しい(仙石線だと1時間半程度かかる)。更に、東北本線利用なため、仙台駅のホームが改札に近くなったのも嬉しい(仙石線の仙台駅ホームは離れた場所にあったため新幹線他への乗り換えが不便だった)。

さて、僕を乗せた列車は、石巻の市街地を抜け、水田の広がる平野を仙台へ向かって西へ西へと走る。そのうちに、海側に自衛隊の基地が見えてくる。ここは、津波によって戦闘機が飲み込まれてしまった航空自衛隊松島基地。戦闘機が押し流された写真を見た方も多いと思う。

車窓からの風景はきわめて穏やかで、ごく一般的な日本の郊外の風景でしかない。仙石線に乗るのも実に6年ぶりのことだが、このあたりの風景は震災前とそれほど変わっていないように思える。その後、列車は、鳴瀬川を渡る。そして、突然に進路を内陸へと変える。自分の記憶が正しければ、かつての仙石線はここからは海近くの平野部を走っていたはずなのに、列車は海から遠ざかり、雑木林に入り、緩い丘を登る。そして停車。周辺は山が切り開かれ、ブルトーザーやダンプカーといった工事車両が並び、今まさに宅地造成が行われている様子が伺える。ここが新しく出来た野蒜駅。この野蒜駅、かつてはもっと海側にあった(とは言え、海が眺められるほど海の近くでもなかったが)が津波によって駅舎は大破してしまった。そのため、以前の場所から500メートルほど内陸の高台へと移転した。移設後の野蒜駅は高台にあるがために、海が綺麗に眺められるようになった。海沿いには更地が多く目に付いた。

この分だと野蒜駅より西でもこのまま内陸を走るのだろうな、と、若干残念な気持ちになった。と、言うのも、かつての仙石線は野蒜駅以西では松島湾の海のすぐ横を走っていた。この区間、車窓からは海に浮かぶ島々を眺められる風光明媚な区間で、仙石線に乗る楽しみのひとつであった。

が、それは杞憂に終わる。野蒜駅を出た列車は、丘を下って、かつての仙石線へと戻った。そして列車は松島湾に沿って走る。海に浮かぶ島々や漁をする船の景色は以前と変わらないように思えた。ただひとつ、変わったのは、この松島湾に沿って新たに防波堤が出来て、以前より眺めが悪くなってしまったこと。白いコンクリートの壁が車窓の下部を占め、進行方向を見ると、その壁が延々と向こうまで続いている。それでも松島の眺めを楽しめたのは嬉しい誤算だった。

なぜ野蒜駅は内陸に移転したのに、この界隈は以前と同じ海沿いに線路が引かれたままなのか?ということを考えているうちに1つ思い出した。松島湾は小さな湾だが、押し寄せた津波の高さは高さは3メートル程度で、湾外よりもはるかに低かったそう。松島湾に浮かぶ島々が防波堤の役割を果たしたといわれている。かつての野蒜駅は湾の外側だった。そのため松島湾沿岸部の線路も以前と同じ海沿いのままでokと判断されたのだろう、壁は作られたけれど。

その後、列車は東北本線に乗り入れる。ここから先は止まる駅もぐっと少なくなる。

そして10:05am仙台着。

高々一時間の乗車時間だが、窓を流れる風景に、不思議と胸が熱くなった。
列車を降りる際、仙石線の復旧と仙石東北ラインの営業開始に尽力してくれたJR東日本や沿線自治体、住民の方々に感謝そして祝辞を送りたい気分になった。

投稿者: Franklin@Filbert 投稿日時: 2016年1月24日(日) 23:42