「グローバル」。ここ数年、頻度高く耳にする言葉です。「グローバル企業」、「グローバルな人材」、「グローバルに活躍」、などなど。その元になっているのはglobe、つまり地球のことですから、地球的、というところから全世界的、といったような意味だと思いますが、それは具体的には何を意味するのか、そしてなぜ人も組織もグローバルであることを目指すべきなのか、ずっと考えていました。そんな折、最近日本のある大学から、まさにそのことに関するアンケート調査への協力依頼をいただきました。

もんもんと考えていたことをがんばって言葉にするいい機会になったので、依頼元の許可を得て、私の回答をここにそのまま転記することにしました。みなさんはどんなふうにお考えでしょうか?

Q1.グローバル人とは?

A.仕事であってもボランティアであっても、あるいは他の何かであっても、一つの組織や一つの国のためだけではなく、最終的には世界のために、世界をよくするという意識と目的を持って生きる人。

たとえ外国語をマスターして外国で仕事をしていても、その国の中でドメスティックなことをやっているだけであれば、個人やその周辺の幸せや、社会的な意義はあったとしてもグローバルとは言えないかも知れないし、一方日本国内在住であっても、上記のような意識や目的を持って何かを行っていればグローバル人といえるかも知れません。

人口も経済も縮小していくことが明らかで、食料もエネルギーも自給できない日本をどうするのかを考えなければならない今こそ、他国といい関係を作り維持していく必要があります。そして政治、行政、産業、研究、教育といったあらゆる領域で、常にギブアンドテイク、時にはギブアンドギブでもよしとし、できる限りwin-winな結果を目指しながら、国境をまたいで活動できる人が求められます。上記のような意識を忘れずに問題解決に当たって欲しいと思います。

Q2.大学でどのようなプログラムを組んだら日本の学生が”グローバル人”の仲間入りができるか。できたら、具体的なプログラムを。

A.大学がどれだけ学生をグローバル人に育てたくても、学生たちがなりたいと思わなければ始まりません。グローバル人とは何か?なぜグローバル人を目指すべきなのか?あるいはなるといいのか?学生にはまずそこから考えてもらう必要があります。

私はそれは、私たちの世界を私たち自身でよくしていきたいからだと思うので、Q1の回答に書いたような人材が目指すべき姿と考えていますが、それに必要なものは以下の2点だけです。

1)世界をよくしたいという強い目的意識と情熱
2)日本人以外とのコミュニケーション能力(多くの場合英語または他の言語)

1)は方法論ではどうにもならないので、何かを教えるという形ではなく、感情を揺さぶり、心の奥深くに訴えかけなければなりません。上記にあてはまると思われる人を順番にできるだけたくさん招待し、それぞれの経験をシェアしてもらい、人生の分岐点での意思決定で決め手となったこと、課題に突き当たった際にどう解決したか、達成できたこととできていないことなどを詳しく聞き出します。多くのゲストスピーカーの話を聞く中で、世の中のどこにどんな種類の問題があるかを知り、その中で自分はどの分野の問題を解決したいと思うのか、解決にはどのような手段があるのか、解決できれば世の中がどのようになるのか、といったことを考えてもらうのがいいのではないでしょうか。

2)が必要になるのは、世界の問題は世界の人たちとのinteractionなしには解決し得ないからですが、外国語でのコミュニケーション能力の習得はこれまで解決法が見つからない難問です。私は、大学での外国語の履修を一種類に絞るのがいいと思います。高校までの英語であいさつや海外旅行は十分できるわけですから、全員がそれ以上英語をマスターする必要はないですし、今後は中国語など他の言語もより重要になりそうです。そもそも第二外国語なんてほとんどの人が卒業後には何も残りません。英語なら英語だけ、他の言語を選択するなら英語はやらせずにその言語だけに集中させるのはいかがでしょうか?もちろん大学の授業で多少集中したからといって、それだけで外国語がマスターできるはずもありませんが、選択と集中によりベターな結果につながる可能性が高い領域だと思います。一番いいのは大学院あたりからとっとと外国に出てしまうことなので、留学可能なTOEFLスコアなどを最初の2,3年の目標とします。○○大学のカリキュラムは知りませんが、外国語は教養課程だけでなく、学部進学後も継続すべきと思います。また上記1)では語学学習のモチベーションアップも図ることになります。

Q3.大学がこうしたプログラムを組むにあたり、うまく運営、成果を出すために必要な要素、事項、など

A.思うところは上でほとんど書きましたが、さらに付け加えるとすれば、まず大学のスタッフ全員が、変わらなきゃという意識を共有できるように、学長、理事レベルの先生方が自他共に認めるグローバル人となり、全教職員を納得させることでしょうか。学生だけあおったところで何も変わらないかも。

ちょっと放言してしまった・・・。

投稿者: A-POT シリコンバレーのバ... 投稿日時: 2012年4月4日(水) 21:21