今日(正確には昨日)はJTPAのギークサロンに出た。演目は「加東崇氏とiPadアプリBookman - PDF/Comic Readerの開発について語る」というもの。iOS上でのアプリ開発については勉強しようと思っていたのだが、全然やる暇がない。その話を聞くつもりで申し込みをしたので、Bookmanについては予備知識なしで参加した。まず今日学んだ言葉は「自炊」。これは2チャンネルの用語で、「本をスキャナで読み込んで電子化する」という意味だ。電子書籍端末の性能が上がれば、画面で本を読むのに抵抗はなく、多くの本を1台で読めれば家でも外出先でも読むことができる。自炊は具体的には、本をばらして(表紙を取り、ページごとに切り分ける)、両面スキャナで読むということだ。加東氏がビデオや実演で本をバラすところを見せてくれた。(ここである年齢よりも上の人にとっては「本をバラす」ことに抵抗があったようだが)慣れてきたら1冊の本を10分くらいで自炊できるそうだが、そもそも今出ている本のほとんどは、電子組版でできているはず。ということは、

  1. 著者がPC上で電子的に本を作る(PDF化)
  2. 紙に印刷する
  3. 製本する
  4. 流通する
  5. 購入した人が本をバラす
  6. スキャンして電子化する(PDF化)
  7. 電子書籍端末で読む

という手順になる。5は3の、6は2の逆の動作をやっている。電子出版であれば、1→4→7ですむはず。それが、4を紙の媒体で流通させるために、ずいぶんと無駄なことをやっていることになる。今日はいろいろなことを考えさせられた、面白い講演だった。まず、「自炊」に当たる英語はなさそう。そもそもKindleやiPadのようなクールな端末があっても、アメリカ人はわざわざ本をバラしてスキャンするなんて面倒なことをやらないのだろう。アメリカでは本は新書でも売れ残ると安くなるし、本をバラすこと自体には抵抗ないと思われる。むしろ、車での移動が多いので、電車で本を読むという習慣がなさそうだ。日本にはスキャポンという「自炊の代行業」があるらしい。これってどうなのだろう?アマゾンで注文した本を、1冊90円で自炊(というより他炊だろ)してくれるのだそうだ。しかしこれってどうなん?かなりヤバいと思うのだが。例えばある本を1冊購入して個人的にスキャンする分には構わないのだが、ユーザから同じ本の注文が来たらどうなる?2冊目からは自炊しなくても、1冊目でスキャンしたデータを送れば済む話だが、これをやったら著作権違反になる。スキャポンでは、「本を毎回裁断してスキャンしている」と「書籍データは客に送付後削除する」と言っているのだが、これで出版社が納得するのかな。日本の書籍の流通は、ある種独占状態、既得権になっているのだが、このことが電子書籍の発展を阻害してきた。しかし同時に「自炊」なる独自のおかしな文化を生み出したとも言えるのだろう。***今から10年ほど前に、HPのイギリス研究所で電子書籍端末のユーザインターフェースの研究に携わったことがある。研究としては非常にいい仕事だったが、その後実用化できなかったので残念な思いをした。また電子書籍に興味が出てきた。

投稿者: Silicon Valley ... 投稿日時: 2010年9月11日(土) 02:14