「人間は機械じゃないんだから、ずっと全速力で走り続けることなどできないよ」「○○は社会人になってから20代30代と異国の地で全速力で突っ走ってきたんだからとにかく疲れてるはずだ、今は何も心配しないでゆっくり休んでくれ」父や兄から暖かいねぎらいの言葉をもらったのは舞台を日本へ移すことを伝えた時だった*  *  *  *  *忙しい毎日を過ごしてきた僕はつけがたまったのかここしばらく体調を崩し病を患い自宅療養をしているそのさなか、人生について様々なことを考える機会を得ることができた胸に希望を抱き渡米した1999年絶対に成功してみせる、と意気込んでいた僕は当時27歳だった自分に課題を課し、一つ一つクリアしていくのがとても心地よかった夢へ向け一歩一歩近づいていると実感しながら毎日生きている自分にわくわくした今日はどんな素晴らしい方との出会いがあるのだろう、今日はどんな挑戦が僕を待っているのだろう、と毎朝事務所に向かう車の中で高揚していたあの頃は本当に若く元気だったもちろん人生楽しいことばかりではない言葉では言い尽くせないほどの辛く悲しい出来事に見舞われることも多かったでもそんな時はいつも妻と手に手をとりあってお互いを支え合い、励ましあい、二人三脚で一つずつ丁寧に乗り越えてきた。だから今でも二人の笑顔が絶えないのかもしれないそんな10年のアメリカ生活にいったん終止符をうち今後の舞台を日本に移すという選択肢は僕にはなかった病を患うまでは。*  *  *  *  *僕が小さい時から両親や祖母から口すっぱくして言われてきたことそれは「人生、健康が一番よ」ということだった元来頑丈な僕は大病を患ったことがなかったのでうん、そうだね、程度にしか気に留めていなかったそしてそれは前触れもなく突然やってくるそしてその本当の意味が今、分かる*  *  *  *  *学校に時間割りがあるように、人生にも時間割があるのかもしれないだとすれば、今は授業と授業の間の休み時間もっと言ってしまえば、僕の人生の夏休みそう割り切れるようになり、今の自分にできることをたくさんできるようになってきた日本文学に慣れ親しむ機会の少なかった僕が今読んでいる本は「羅生門」と「坊ちゃん」「坊ちゃん」がこんなに面白いだなんて、高校生の時は全く気づかなかった司馬遼太郎も是非もう一度トライしたい夏休みが明けたらやりたいことがあるそれは今まで僕がやってきたこととは違うそれは僕が今まで生きるためにやってきたことではなく僕がやりたいからやることである人生一度しかないのだからそれだったら生きるためにやるのではなくやりたいことがあるからやる、というのでいいのでは、と思えるようになったこう思えるようになったのも病のおかげ*  *  *  *  *そして紅葉が綺麗な時期に空気の美味しい神戸の街での夏休みが始まった。

投稿者: シリコンバレー発 脱藩組の挑戦 投稿日時: 2009年11月13日(金) 06:35