この家に引っ越して来てから30年経ちました。 当時ご近所は退職者や退職に近い年齢の方ばかりで、私達はこの一角で一番若い夫婦でした。 銀行所有の物件だったのは家主の老婦人が亡くなられたからです。 何の病気だったのか、どのくらい病床にあったのかは分かりませんが、裏庭には鮮やかなベゴニアが咲き、外でお花を楽しむくらいのお元気はあったのだろうと想像しました。 古家を買う時は前の家主さんはどんな人だったのだろう、どうして家を手放すのだろうと買い手は興味がわきます。 私は銀行から「病死」というのは聞かされていたのですが、家に入った途端に寿命をまっとうした老婦人の幸せな雰囲気を感じてこの家で起った「死」に何も恐怖感を持ちませんでした。引越し後2年間以上も、時々この老婦人宛ての名前で郵便物が届きました。 そこで私達はこの老婦人のお名前がパット リーさんであることを知ったのでした。私は当時妊娠8ヶ月でとても家の整理をする元気もなく、荷物も収まらないままに娘が生まれ、その後直ぐ自宅で歯科技巧の仕事も始めたので引越しが落ち着くまで数年かかりました。 数年後に車庫の整理をしていると、破れた紙袋が屋根に近い棚の上に隠れるように置いてありました。 紙袋中を見ると、パット リーさんの若い頃の写真があるではないですか! パット リーさんハリウッドのスターレットが生まれ故郷のアイルランドに帰ってベルファストのエンパイヤ劇場で錦を飾るお知らせでした。 女優さんだけあってとても綺麗な女性です。 移民局への登録からアイルランド人のお姉さんを呼び寄せて、娘が一人いた事も分かりました。 夫のハワード リーさんは建築家だったようで、何枚かの実施設計図と月刊誌に設計した家が紹介された時の記事等も入っていました。図面9800ドル 当時の家は新築で9800ドル!パットさんが一足先に一人で東部を訪ねた時、無事に着いたという夫への電報は1949年。 もう直ぐこちらを発つというカルフォルニアの夫からパットさんに送られた電報。 「I miss you」という一言から幸せな結婚であったことがうかがえます。丁度60年前に同じ屋根の下で又違う人生があったのかと思うと不思議な気持ちになります。 車庫にこれを見つけて25年も経つのに、未だ捨てられないのです。 にほんブログ村 シニア日記ブログへ今日もご訪問有難うございました。

投稿者: カルフォルニアのばあさんブログ 投稿日時: 2009年11月17日(火) 14:54