書籍:「LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折」(★★☆)コメント:大学時代にLTCMを研究していた友人に紹介された書籍。本書籍は、金融工学の歴史とLTCM(ロングターム・キャピタル・マネージメント)という伝説的なヘッジファンドに焦点を当てた内容になっている。前半は、大学で習った物理学の定理等が並び懐かしくも感じたが、後半は一生懸命読まないと、なかなか読み進まないのが厳しいところ。正直、ヘッジ取引を文章で理解するのには限界があると思った(苦笑)尚、本書籍でも、ゴールドマン・サックス、リーマン・ブラザーズ、ベア・スターンズ、AIUなど、2008年の世界同時不況でも主役を演じた企業が名前を連ねる。結局のところ、金融業界は、10年に1度くらいの周期でゲームの掛け金を清算しているのだと思った。ポイントになるのは、「科学はすべて仮定から始まる」ということ。ブラック、ショールズ、マートンの理論に於ける仮定とは、市場は「連続的(24時間)」で「摩擦(コスト)がない」、更に「対象資産は、ランダムウォークを辿る」である。しかし、実際には「ランダムウォーク」には「ジャンプ拡散」という仮定には含めない異常値が出現する。この異常値を、どのように捉えるが非常に重要になるという事。私自身が、2008年の世界同時不況も踏まえて唯一分かる事は、「想定外の事象は必ず生じる」という事、そして、「早急に『流動性』を確保する、つまり「流動資産(Cash)」を取りに行く」という事であり、常日頃から、その準備に励むという事なのだと思う。また、1999年LTCM清算後に、ジョン・メリウェザーが設立した新たなヘッジファンド「JWMパートナーズ」のレバレッジ率が10対1となっていることは非常に興味深い。(Wikipedia参照)尚、参考までに登場人物を、以下の通り時系列で記載しておく。ダニエル・ベルヌーイ:物理学者、容器の中の気体は無数のごく小さい分子で出来ていて、容器の壁や他の分子と絶えずぶつかり合っているという説。ロバート・ブラウン:1828年、植物学者、ブラウン運動ジェームズ・クラーク・マックスウェル:1860年代、気体は平衡状態の状態にあるアンリ・ポアンカレ:フランス人、数学者、物理学者ルイ・バチャリエ:ボアンカレの教え子、1900年、ブラウン運動の持つ数学性、パリ株式市場、ボアンカレから勘当、人間行動の数学モデルアルバート・アインシュタイン:1905年、微粒子のランダム・ウォーク、正規分布ハリー・マーコウィッツ:1952年、シカゴ大学、相関関係とポートフォリオ(リスク分散)とういうアイディア、効率的ポートフォリオ、ノーベル賞ウィリアム・シャープ:マーコウィッツの教え子、資本資産評価モデル(CAPM)を示す。マートン・ミラー:シカゴ大学教職、CAPM、裁定、「一物一価」を強制する仕組みフランコ・モディリアーニ:経済学者、CAPM、モディリアーニ-ミラー理論、企業の価値は、その企業の株式と社債の構成とは関係ない、ノーベル賞ユージン・ファーマ:1965年、株式市場価格のランダム・ウォーク、シカゴ大学教職ポール・サミュエルソン:MIT、バチャリエを金融世界に引き戻す、株主は有限責任である為、株価はマイナスになり得ない。リターンがランダムウォークをたどるという理論、ケネディ政権で経済政策顧問ロバート・C・マートン:1944年生、コロンビア大学、エンジニアリング専攻、カリフォルニア工科大学、MIT、数学に秀でた人物が必要としていたサミュエルソンと出会う。ブラウン運動と正規分布と標準偏差、伊藤の定理、ハーバード大学、メリウェザーによりソロモン・ブラザーズ特別顧問、1992年特別顧問辞任、1993年LTCMに参画、1997年ノーベル賞、1998年LTCM破綻、1999年6月LTCM退職マイロン・ショールズ:カナダ、シカゴ大学、MIT、シカゴ大学の教授マートン・ミラー、店頭オプション、オプションおよび企業債務の評価、オプションには恐怖心(リスク)と貪欲(裁定)というふたつの面がある、シカゴ大学、メリウェザーによりソロモン・ブラザーズ特別顧問、1993年LTCMに参画、1997年ノーベル賞、1998年LTCM破綻、1999年1月LTCM退職、スタンフォード大学教授、2008年、新たに自身が設立したヘッジファンド(プラチナム・グローブ・コンティンジェント・マスター・ファンド)が破綻ジャック・トレイナー:アーサー・D・リトル、ビル・シャープとは別にCAPM(資本資産評価モデル)を発見フィッシャー・ブラック:ワラント、1969年、ブラック-ショールズ式のオプション価格算出法、シカゴ大学教職、1984年学会を去る、ゴールドマン・サックス・教授とは研究をするために給料が支払われるのではなく、学生に教えることで給料を貰うという目的をはっきりさせるべきだ、1995年死去ジョン・メリウェザー①:1947年生、ノースウェスタン大学、シカゴ大学MBA、ジョン・コーザインはクラスメイト、ソロモン・ブラザーズ入社、債権、リチャード・サンダー:バークレー校、シカゴ大客員教授、CBOTチーフエコノミストリチャード・ファインマン:物理学者、カリフォルニア工科大学教職、量子電気力学、サム・オーバー・パス、ノーベル賞、原子爆弾ステファン・ロス:カリフォルニア工科大学、ゲーム理論、ハーバード大学、ウォートン・スクール教職、CAPMのライバルとなる裁定価格理論(APT)を考案、需給ではなく、スプレッドがリスクとリターンの関係を決めるジョン・コックス:ウォートン・スクール博士マーク・ルビンシュタイン:バークレイ校教授、ロス・コックスと研究、ツリー・ダイアグラム(二項モデル)、ヘイン・リーランド、ポートフォリオ保険、LOR、デルタ・ヘッジ、1987年、ブラック・マンデー、市場が動揺、大惨事ジョン・メリウェザー②:ソロモン・ブラザーズの中にLTCMの前身を構築、ポーロ・モーザのスキャンダルを切欠にソロモン・ブラザーズ会長ガットフレンドとシュトラウスが解任、最大株主であるウォーレン・バフェットが会長職に就任したことにより、メリウェザーは辞任、1992年ヘッジファンドLTCM設立、LTCMは、損切りルールが無い為、一旦ポジションを取ったら短期でクローズすることはないことが名前の由来、メリルリンチが販売、ベア・スターンズがバックオフィスのアウトソースを引き受ける、1994年当時異なるマネーマシーンが相互にどう影響し合うかは十分考慮されていなかったのではないか、1997年当面必要のない資本を返却し自己資本47億7千万ドルに最大27.7倍のレバレッジ(借入金)とオフ・バランス1兆2500億ドルという逆ピラピッドの資金を運用していた、1998年ソロモン・ブラザーズがシティバンクと合併、ロシア危機、大手投資銀行がレバレッジから資本を非難させる為にポジションを縮小、大手投資銀行がロシアだけでなく全てのポジションを縮小、LTCMは取引維持のための証拠金増額要求と自己資本の毀損に見舞われる、増資(⇒資金調達不調)かポジションの縮小(⇒損失の拡大)が必要、1998年LTCM破綻、1999年FRBの指示によりLTCMに資金を提供していた15銀行が、LTCMに最低限の資金を融通し、当面の取引を執行させて緩やかに解体を行い、同年度中に90%以上を完済ラリー・ヒリブランド:ソロモン・ブラザーズ、メリウェザーの部下、1993年LTCMに参画エリック・ローゼンフェルド:MIT、マートン教授の弟子、1980年、株価のストキャスティック・プロセス、ミッチー・ケイパー、瞑想、ロータス、ハーバード大学、ボブ・マートン(MIT教授)、ソロモン・ブラザーズ、メリウェザーの部下、1993年LTCMに参画、グレッグ・ホーキンス:バークレー校、ソロモン・ブラザーズ、メリウェザーの部下、1993年LTCMに参画、1998年LTCM破綻、1999年7月LTCM退職ビル・クラスカー:ハーバード大学、ソロモン・ブラザーズ、メリウェザーの部下、LTCM、1998年LTCM破綻、1999年1月LTCM退職ビクター・ハガニー:ソロモン・ブラザーズ、東京、メリウェザーの部下、1993年LTCMに参画、イタリアサマン・マッジ:イェ-ル大学、ソロモン・ブラザーズ、メリウェザーの部下、ドイツ銀行ポーロ・モーザ:ソロモン・ブラザーズ、メリウェザーの部下、スキャンダルディック・レーヒー:ソロモン・ブラザーズ、メリウェザーの部下、1993年LTCMに参画ジェームズ・マッケンティー:メリウェザーの友人、1993年LTCMに参画、1999年7月LTCM退職チー・フー・ファン:MIT、ジョン・コックス、ゴールドマン・サックス、LTCM参画、1999年7月LTCM退職デビッド・モデスト:MIT、バークレー校、ソロモン・ブラザーズ、LTCM参画、1999年7月LTCM退職デビット・W・マリンズ・ジュニア:イェール大学、MIT、ハーバード大学、1990年FRB副議長、LTCM参画、1999年7月LTCM退職マティス・キャビエラベッタ:UBS最高責任者、LTCMと戦略的提携ラミー・ゴールドシュタイン:イェ-ル大学、ステファン・ロス、ファースト・ボストン、UBS、1997年UBS解雇LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折(2001/02)ニコラス ダンバー商品詳細を見る

投稿者: YES AND .blog 投稿日時: 2009年9月6日(日) 03:29