3週間前の週末、金曜日から月曜日にかけて、夫の親戚に会いに、南カリフォルニアまでドライブしてきました。義妹はサンディエゴの郊外のエスコンディドという町に住んでいます。サンタクルーズからエスコンディドまでは720km。日本でいえば東京から山口県ぐらいの距離です。日本にいるときに車で長距離、といえば若いときに夜行バスで東京から大阪に行ったり、スキーで長野県まで往復したぐらいですから、これだけの距離を4日間のうちに往復したのは初めてのことでした。往路は最短距離をとり、州都サクラメントとLAを結ぶハイウェイ5で行くことにしました。金曜日の午後、仕事を早めに切り上げ、3時ごろ出発し、エスコンディドのホテルについたのが11時半ごろでしょうか。グーグル検索で7時間半、とありますが、子連れでトイレや夕飯のために休憩を取りながらのわりには、スムーズにゆけたということですね。ハイウェイ(HW)5はお世辞にも「風光明媚」なドライブではありません。大型トラック(Semiといわれる、タイヤ20輪のヤツです)が行き交う、荒涼とした風景の中のドライブです。カリフォルニアは沿岸近くは緑豊かですが、一山越えれば、地下水をスプリンクラーで撒かなければ農業は成り立たない、乾燥した気候です。まっさきに見たのはサンルイス・レザヴォアという巨大な人工湖。カリフォルニアには大小多数の人工湖があって、遠距離までの水需要を満たしています。そしてこの人工湖には当然ダムと水力発電の設備もあります。このあたりではワイナリー、そしてアーモンドやピスタチオといった果樹園が広がっています。さらに南に下ると緑の量がどんどん減ってゆきます。HWぞいに北カリフォルニアからLA、サンディエゴをつなぐ運河も目にしました。さらに、見渡す限り屠殺を待つ牛がぎゅうぎゅうに閉じ込められたケージが広がる風景や、ぽつん、ぽつんと雁首を動かす石油掘削ポンプも見ました。南カリフォルニアは、20世紀に入るまでは大きな都市が存在することは不可能でした。それはなんといっても水資源がないということに尽きます。ところが19世紀末からユタ州でモルモン教徒が地下水の掘削技術を開発し、また石油を燃やして電気ポンプで水を大量にくみ上げることができるようになり、都市を支える農業、産業用水を確保することができるようになり、LAやサンディエゴといった都市の建設と拡大が可能になったのです。運河や地下水といった水資源はもともとはロッキー山系の雪解け水が源になっています。温暖化が進み冬季の降雪量が減れば、川や地下水の水位は下がります。爆弾低気圧のような豪雨による降雨は、そのまま海に流れてしまう割合が高く、水の供給はさらに困難になるでしょう。さて、こちらに来てもうひとつ気になったのは、インディアン居留地の存在でした。エスコンディドの周辺にはいくつかインディアン居留地があり、そのうちのひとつ、テメキュラの町に立ち寄ることになりました。テメキュラはペチャンガというインディアンのトライブの居留地に位置しており、町の中心には、周囲を睥睨するような、唯一高層のカジノリゾートホテルが建っていました。アメリカではギャンブルはラスヴェガスとニュージャージー州アトランティックシティ以外は違法なのですが、インディアン居留地は連邦政府の管轄外ということで、カジノが建設されることが良くあるのです。居留地におしこめられても、伝統的な狩猟採集で必要な生活の糧を得るには狭すぎる、結局生活保護に頼るしかありません。生活保護に頼るか、ギャンブルよるとしても自立した経済をもてるほうがよいのか、という選択肢を与えられたら、自立を選ぶほうがいいのでしょう。義妹の友人はペチャンガの一員と付き合って妊娠したのですが、子供が生まれる前に彼が精神的に爆発してしまい、(双極性と診断されたとか)別れてしまいました。仕事をやめてしまって、これから経済的に大変じゃないの?とたずねたら、彼はインディアンとして年金をもらっているので、別れてからも母子を経済的には支援し続けてくれているのだとか。帰りはHW1を海沿いにドライブ、行きとは違い、美しい海岸の風景を楽しみながらのドライブになりました。途中で廃墟になった「ミッションサンミゲル」を通り過ぎながら、来し方の歴史に思いをはせずにはおられませんでした。サンディエゴもサンタクルーズも、もともとはカトリックのミッションが始まりの町ですが、今はサンタクルーズ近郊にはネイティブの人々もその文化も全く残っていません。オローニー(Ohlone)という人々がいたのですが、スペイン人の持ち込んだウィルスによって人口が激減、残ったわずかな人々も生活の糧を失い、周囲に同化するしかありませんでした。この旅をきっかけに、アメリカの先住民の問題にちょっと興味がでてきました。たまたまPBSの”American Experience”という番組でアメリカインディアンの歴史ドキュメンタリーを連続してやっており、今まで17世紀のサンクスギビングのもとになったエピソード、そして1812年の米英戦争のきっかけとなったショウニー族のチーフ、テカムセのエピソードの二つの番組を見ました。PBSはアメリカ政府の資金も入っている放送局ですが、このドキュメンタリーは、インディアン側の視点がプロデューサー、語り部として中心になっており、アメリカの暗部に光を照らす良心的な番組になっていると思いました。日々の生活で気付かないこと、この4日間のドライブで新たに心にひっかかるものがでてきました。

投稿者: みーぽんのカリフォルニアで社会科 投稿日時: 2009年4月24日(金) 18:02